自らの職業を明記して売値を上げようとするエンコー嬢は、太古の昔からおりました。
スッチーや受付嬢などから、丸の内のOLです、ミッション系の女子大生です、なんてものまで、連中は5千円でも多く稼ぐため、あらゆるウソを駆使してくるものです。
さて今回のエンコー娘は、実に微妙なソソリ職業を書き込んでいました。
上手い、と感嘆せざるをえません。
我々買い手が近ごろのエンコーに辟易してきたのは、いまどきギャルの奔放さのせいです。茶髪、こってりメイク、ストラップちゃらちゃら。こんな女たちにイチゴーも払ってれば、そりゃ飽き飽きするってもんです。
そんなエンコー界に忽然とあらわれた、お習字の先生。
古風な黒髪の和服美人が、知り合いに見つからぬよう緊張しながらやってくることでしょう。
アポ場所に現われたのは、茶髪、短パンの色黒ギャルでした。「あっ、どうも」と一言だけかわし、すぐにホテル街へと歩いていきます。見事なまでの想像の裏切り方です。
部屋に入り、すかさず2から1.5に値切ったあと、軽くお願いしてみました。
「最近、引っ越したんで、表札用の名前を書いてもらえるかな?」
「え、ああ、…でもウチ、硬筆は下手なんで」
「大丈夫、筆ペン持ってきたから」
「・・・・・・」
戸惑う彼女に筆ペンを押しつけ、上手下手が如実に表れそうな「佐藤」の文字を書いてもらうことに。先生のお手並み拝見です。
先生はなんと左利きでした。ハネやハライに不利な気もしますが、どうなんでしょう。書き上がった文字は下の写真のとおりです。
「藤」の字に何かが足りなく見えるのは気のせいでしょうか。これで腕前は自称二段。これで先生。書道の世界はずいぶん甘いようです。
この記事は『裏モノJAPAN2011年10月号[Kindle版]』に掲載されております。
他の記事をご覧になりたい方は、下記リンクよりアマゾンでお求めください。