アンダーグラウンド
東京~大阪~福岡~沖縄。強盗殺人未遂犯と知らずに2週間、寝食をともにした俺
2016.5.16

「なぁ、大阪で一緒にデートクラブ始めないか」

 パチンコ店の先輩、山下さん(仮名)がおいしい話を持ちかけてきたのは去年9月のことだ。

 当時26才の山下さんは、俺の兄貴分と呼べる人で、ほんの1年前までホテトルを経営していた。なんでも店が潰れた後も1人開業計画を練り、いよいよ資金にメドがついたらしい。成功すれば月2~300万の収入になるそうだ。

 むふふ。これはいい話じゃありませんか。兄貴の後についていきゃ、女もカネも思いのまま。行きます、行きます。何処でも着いて行きまっせ~。

 その日のうちに店を辞め、翌日には羽田へ。費用はもちろんすべて兄貴持ちである。

「大阪まで二枚。名前は鈴木幸二と村西由紀夫ね」

「ん、鈴木幸二って?」

「しっ。偽名だよ。以前、飛行機会社にクレーム入れたら、ブラックリストに載ってるみたいでさ」

「な~るほど。さすが兄貴。ワルですなぁ。」

 大阪梅田のビジネスホテルをカリスマ住まいとし、さっそく仕事に取りかかる。はずだったが、3日たっても4日たっても、なんの動きもない。兄貴、どうなってんすか。

「心配すんな。福岡に事務所を用意した。明日旅立つぞ」

「わかりました」

 翌日、新大阪駅から新幹線に乗り込み博多へ。いよいよ本格的にスタートかと思いきや、今度は3日もたたないうちに

「沖縄に行こう~!」

 と言い出した。沖縄なんて、そんなとこで儲かるんすか。

「馬鹿、お前は何も知らないんだなぁ。あそこは米軍相手に儲かってしゃあないんだ」

「なるほど」

「もう準備できてるから」

「おー!ついに来ましたか」

「ま、沖縄がダメだったらフィリピンって手もあるしな」

「へっ、フィリピン?パスポート持ってませんぜ」

「俺もねぇから安心しろ。入国ルートは確保してるし」

「いや、それは・・・」

 沖縄ならまだしも、さすがにフィリピンは遠い。遠すぎるよ兄貴。ごめんなさい。俺、地元に帰ります。

 

 とここで終われば取り立てて騒ぐ話ではない。兄貴の誘いに乗り、直前でへたれの俺が逃げ出した。ただそれだけである。

 が、地元に戻って半年程たったころだろうか。俺は以前のパチンコ屋の店長から、衝撃的な事実を聞かされた。

「よく無事だったなぁ。」

「無事?なんすかソレ」

「山下のこと知らないの?」

「へっ?」

「あいつ、一昨日、強盗殺人未遂でパクられたんだぜ。」

「えっ!?」

 店長の話によれば、兄貴はオレと大阪へ旅立つ直前にとある女の部屋に侵入、さんざん殴り飛ばした末に金を奪い逃げたという。それも、同様の事件を2~3繰り返し、中には重傷を負った女性もいるらしい。

 思わず背筋が寒くなった。ってことはナニか。俺は強盗殺人未遂犯が女性から奪った金で約2週間、寝食をともに過ごしていたのか。ウソだろ・・・。

 確かに不審な点はあった。偽名を使ったり、行き先がころころ変わったり。警察の捜査をかく乱していたと考えれば合点はいく。

 でも、じゃあ兄貴はなんで俺に声をかけたんだ。逃亡するなら一人の方がよっぽど身軽だろう。俺は今、兄貴に事の真意を尋ねるべく、ムショに手紙を書こうか考えている。

イラスト・坂本千明

イラスト・坂本千明

 

 

 

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本稿は裏モノJAPAN2001年12月号に掲載された記事をWeb版に再編集したものです。

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201606

 

 

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