その他
エイプリルフールのテレクラで「3万円の約束はウソでした」と エンコー代金を30円に値切ってみた
2016.4.2

 4月1日の昼下がり。編集部でボケーッとしながら、今日はもう会社を早退して風俗にでも行こうと思っていたそのとき、卓上カレンダーに目が留まった。
 そうか、今日はエイプリルフールか!
 子供のころは、ここぞとばかりに親や友達にウソをついたものだ。100万円拾ったとか、殺人鬼に会ったとか。楽しかったなぁ。
 そうだ、せっかくなんだし、今日は何かウソをついてやろう。どんなのがいいかな。
 決まった。テレクラのエンコー女に「3万円で遊ぼうよ」と持ちかけて、ホテルに入ったあとで「ウソだよー。3千円ね」とカマすのはどうだろう。
 なんてったって今日はウソが許されてるのだ。「嘘つき!」と罵られたって痛くも痒くもないですよ。3千円でハメてやる!
 さっそく新宿のテレクラへ。コールはすぐに取れた。「もしもしぃ〜」
 頭のネジがちょっと緩んでそうな、間の抜けた喋り方の女である。

「おにーさんは、どんな人をしてるんですか?」
「んっと、エッチな子かな」
「何それー」
「オネーさんは、どんな感じの人なの?」
「うちはワリキリ」
「そっかエンコーなんだ」
 ちょっと考えたふりをして、間をおいてから切り出す。
「3万でどう?」
「えっ?」
「3万で遊ぼうよ」
「あっ、いいけどぉー」
 声のトーンが急に跳ね上がった。現在のエンコー相場は2万なのだから無理もない。こりゃあいい客をつかまえたとでも思ってることだろう。今日が何の日かも忘れて。
「じゃあ、3万でね」
「わかった」
 かくして交渉成立。待ち合わせの駅前に向かうと、手足が短くてケツがでかい、妙にチンチクリンな女が立っていた。何だか小汚いし、笑うと歯茎が出てるし。当たりかハズレかで言えば完全に後者である。
 どうなんだろう、この女は。3千円払うのもアホらしいな。30円でいいんじゃないの?
 ホテルに向かう途中、彼女が小指のリングを見せて言った。

「これ、ウソカレシだから。カレシがいるように見せてるだけのリングだから気にしないでね」
 何だそれ。聞いてないって。オレが3万の上客だから、気を使ってくれてるのかな。ダマされてるとも知らずに、浮かれとりますな。

 

 ラブホのベッドに腰をかけ、彼女が申し訳なさそうに切り出してきた。「お金、先にもらっていいかな?」

 ちっ、やっぱ先払いを求めてきたか。できることならコトを終えた後、後払いでカマしてやりたかったところだが。

 じゃあ、やりますか。オレは一つ深呼吸したあと、ポケットから小銭を取り出した。

無題
「はい30円」
「えっ?」  彼女の目がギョッと丸くなった。何の冗談だと言わんばかりに。
「引っかかったね」
「はぁ?」
「今日はエイプリルフールだよ!てことで3万はウソ。30円でヨロシク」
 女は小銭を受け取らず、苦笑いしている。引っかかったのがよっぽど悔しかったのだろうか。
 でも、そんな恨めしそうな目で見つめてもダメだもんね。エイプリルフールはウソついていい日なんだし。だからほら、早くエッチしようよ。

「何なの?」
「何なのって、エイプリルフールだって」
「意味わかんないんだけど」
 彼女の表情はいよいよ厳しくなってきた。本当に意味がわからないという雰囲気である。まさかこの女、エイプリルフールを知らないのか?

 万が一のために用意はしてきてる。オレはカバンから卓上カレンダーと資料のプリントを取り出した。

無題2

「ほら、このカレンダー見てよ」
「……」
「エイプリルフールって書いてあるでしょ」
「…」
「それから、これはネットで調べた資料。エイプリルフールはウソをついていいって書いてるでしょ」
 ほら読んでみてと差し出すと、彼女はプイと顔を背けてしまった。

「ねえ、ちゃんと読んでよ」
「知ってるし」
「エイプリルフールを知ってんの?」
「知ってるって」
 知ってんのかよ。自分が引っかかったことを認めたくないだけか。でもオレは引かないぞ。

「ねえ、今日はウソをついていい日なんだよ」
「だからって、こういうウソはついちゃいけないよ」
 おっと反論ですか。

「ウソにああもこうも種類なんてないよ」
「……」
「だいたい、キミだってカレシいないのに、ウソ指輪してるじゃん」
「そういうのはいいの」

「じゃあ、どういうのがダメなの?」
「お金のことはウソついちゃいけない」

無題4
 勝手なことを言いやがって。オレの正式な資料には、そんなこと一言も書いてないのに、オリジナルルールを作りやがって。

「あのさ、引っかかって悔しいのはわかるけど、もう観念しなよ」
「……」
「ほら、30円」
「ヤダ」
「じゃあ、タダでいいってことかな」
「ヤダ」
 何を言おうと、彼女は一切応じなかった。だからといって帰ろうともしない。そのうちにオレがムラムラしてきて、根負けするとでも思ってるのか。ナメんな。

「エイプリルフールだからウソはついていいんだよ」
「お金のことはウソついちゃいけない」

無題3
 一進一退の攻防が続くこと20分、最終的に彼女はすたすた部屋を出て行ってしまった。
 来年リベンジだ。

 

 

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本稿は裏モノJAPAN2011年6月号に掲載された記事をWeb版に再編集したものです。

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