その他
恩返しするのは今しかない!不良の俺を熱血指導してくれたあの先生が駅で怪しい動きを・・・
2016.3.19

 今年のゴールデンウィーク最終日の出来事だ。
 帰省先から都内の自宅へ帰る途中、地元の駅の構内でずいぶん懐かしい人物を見かけた。
 以前よりは多少、白髪が増えてはいたものの、あのダルマのような小太り体型と特徴的な薄毛の男を見間違えるわけがない。

 中学時代の恩師、藤田先生だ。
 先生の姿を見かけるなんていつぶりだろうか。相変わらずパッとしない風貌だけど、元気にやってんのかな。迷わず、俺は先生の方へ歩を進めた。かつて受けた多大な愛情を思い出しながら。

 

よく頑張った!お前は俺の誇りだ!!

 中学時代の俺は、自他ともに認める問題児だった。頭を金髪にして登校し、校内では平然とタバコを吹かす。気に入らないことがあれば、誰かれ構わずに暴力をふるう。まさにやりたい放題だ。
 教師たちの大半は俺をシカト、あるいは腫れ物を扱うように接した。どっちにせよ、まともに関わりあう気がなかったのは明らかだ。
 そんな状況にあって、唯一、俺と真剣に向きあってくれたのが、3年の時に赴任してきた数学教師、藤田先生だった。当時はまだ30ちょいくらいだったと思うが、若い熱血教師の見本のようなキャラで、ずいぶんとこっぴどく叱られたものだ。

 俺が先生を心の底から嫌いになれなかったのは、言動にどこか真実味を感じたからだろう。この人は自分のことを心から心配してくれている。そう思わせるだけの熱意が確かにあったのだ。
 そして中3の秋、決定的な出来事が起きる。発端は、トイレでの喫煙を注意され、カッとなった俺が、学年主任の顔面をぶん殴ってしまったことだ。

 校内は上を下への大騒ぎとなり、ある女教師が「警察を呼びます!」とヒステリックに叫ぶなか、駆けつけた藤田先生が有無も言わさず、俺を殴ったのだ。

 何発も何発も、それこそ鼻血が吹き出すくらいに。先生は学年主任に土下座し、涙声で言った。
「これで勘弁してやってください。お願いします!」
 先生の嘆願によって、コトは大事に至らず、俺は逮捕をまぬがれた。大の男が自分のために土下座までしてくれたのだ。その恩義に報いようと、以来、俺は少しずつ態度や服装の乱れをあらため、さらに放課後は藤田先生のもとで積極的に補習を受けた。

 結果、一度は完全にあきらめていた高校受験にも見事合格した。
 迎えた卒業式、先生が大粒の涙を流して「よく頑張った! お前は俺の誇りだ!!」と言ってくれた際、いつかこの人に恩返しをしたいと思いながら、はや15 年以上の月日が流れてしまった。
 ひとまず先生に声をかけて、もう一回、あのときの礼を言わなきゃ。不良学生だった自分が高校大学と進学し、現在こうしてまっとうな社会人になれたのも、すべては先生のおかげなんだから。

 

ミニスカ女の真後ろで手をごにょごにょ動かし…

 声をかけようと背後から近づいた矢先、駅の階段付近にいた先生がふいに歩き始めた。
 何気なくその姿を目で追うと、先生はタタタッと、かなりのスピードで階段を駆け上がり、ミニスカ女の真後ろまで来た途端、急に速度を落とし、ごにょごにょと何やら手を動かしている。何やってんだ? まさか…。
 ふと嫌な予感に駆られ、しばらく観察を続けたところ、その後も先生は弁解の余地がないほど怪しい動きを見せつづけた。

 構内を物色するように練り歩いていたかと思えば、突然、慌てたように階段を上がりはじめる。その先には必ずミニスカ女がいて、しかも先生の右手にはスマホが。ということはやっぱり、アレしか考えられない。

 なんてこった。よりにもよって、恩師がパンチラ盗撮している場面に出くわすとは。ちょっと先生、せっかく15年ぶりに会ったってのに、なにアホなことやってんのよ!

恩師
 とにかく、こんな時に声をかけるのは、お互い、あまりにも気まず過ぎる。ここは見なかったことにして大人しく帰るか。
 きびすを返しかけたそのとき、不吉な連中が目に止まった。先生の背後を、一定の距離をあけて歩く2人組の男たちだ。やけにガタイがいい点、先生をいつまでも尾行するようについて回る点からして、私服の鉄道警察に間違いない。きっと現行犯逮捕のチャンスを伺ってるんだろう。
 しかし、当の先生はまったく気づく様子もなく、相変わらず不審な動きを続けている。ああ、もう見てらんないよ。
 たまらずダッシュして先生に追いついた。
「藤田先生、お久しぶりです。松下ですよ」

 一瞬、驚きの表情を見せて、先生が俺を凝視した。
「おお、松下か。久しぶりだな、元気にやってるか!」
「はい、おかげさまで。あの先生、ちょっとご相談があるので、移動しませんか」
「おお、そうだな」
 階段を上りきって、ホームのベンチに2人で座る。ふうっと深呼吸をして俺は切り出した。
「先生、盗撮はまずいですよ。警察にマークされてますよ」
「何を言ってんだ、お前」
「いや、俺、ずっと見てたんで…。こんなことでパクられたら人生終わりですよ」
「………」
 長い長い沈黙の後、先生は盗撮をしていたことを認め、涙ながらにつぶやいた。
「俺も何かとストレスが溜まってな。かれこれ2年もこんなバカなことやってんだよ。情けないなぁ」
「もうこういうことはやめてください。俺を更正させてくれた先生ならきっと大丈夫ですから」
「うん、もうしない。松下、本当にありがとう。うう…」
 がっくりと泣き崩れる先生の体が、何だか記憶の中のソレよりもずっと小さく見えた。

 尊敬していた恩師が盗撮犯だったことはいささかショックだったが、どのような形であれ、15年前の借りを返せたという意味では本当に良かったと思っている。

 先生、いつか酒でも飲みましょう。

 

 

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本稿は裏モノJAPAN2013年8月号に掲載された記事をWeb版に再編集したものです。

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裏モノJAPAN201308

 

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