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手紙を渡そうとまで思った通勤電車の憧れの彼女が3万円でワリキリしていたなんて……
2016.2.15

 半年ほど前、朝の通勤電車で若い女を見かけた。

 ロングの黒髪、きめ細やかな白い肌。そして、ミニスカートからは、エロくさい柄タイツに包まれた長い脚がスラリと伸びている。

 間違いなく、我が人生でも1、2位を争うほどのイイ女だ。てか、目まいがしそう!

 声をかけてみるか?いやいや、小心者の俺には電車内で堂々とナンパする勇気などあるわけがない。神々しい姿をチラチラと盗み見るのが関の山だ。

 やがて電車は目的の駅に到着。俺は後ろ髪を引かれる思いでホームを降りた。

 はぁ。あんなキレイな女とはもう二度と会えないんだろうなぁ。

 

例の手紙は準備したものの

 人生はままならないものとよく言われるが、時には例外もあるらしい。何とあの日以来、同じ電車でしばしば例の女と乗り合わせるようになったのだ。

 頻度は週に2、3回。もしかしたら俺が気づくずっと前から、彼女はこの電車を利用していたのかもしれない。
好奇心がムクムクと湧いてきた。

 何をしてるコなのか。年恰好からして、たぶん女子大生だろう。彼氏は絶対いるな。あのルックスじゃ、男どもが放っておくはずがないし。
 彼女への関心は日ごとに増すばかりだった。

 さすがにセックスは高望みだとしても、せめてお茶ぐらいはできないものだろうか。これほどの上玉に何もアクションを起こさず、ただ眺めているだけってのはあまりにももったいない。
 そこで浮上したのが手紙作戦だ。裏モノの連載「拝啓 美人店員様」で使われている文面をパクらせてもらい、彼女に接触しようというのである。
 これなら誠実な印象も与えられるし、勇気もさほど必要ないはずだ。はりきって手紙を作成した翌日、さっそくチャンスが巡ってきた。

 電車に乗りこむと、入口ドアのそばで彼女がちょこんと立っている。周囲に人はいない。よし、今だ。渡せ。おもむろに彼女の方へ歩み出す。

 が、彼女の背中が目前に迫ったとき、足がピタッと止まった。今さらのように、最悪のシーンがまぶたに浮かんだのだ。
「これ、読んでほしいんですけど」

「え、そんなの困ります」

 うっ、やっぱ無理無理。できないって。

 こうしてまた、彼女を眺めるだけの日々が始まった。スーツの内ポケットに忍ばせたままの手紙を、どうすることもできずに。

 

あれって電車のコじゃねえの!?

 つい1カ月前のことだ。

 大学時代の友人と久しぶりに飲んだ帰り、やつが思い出したように言った。
「ちらっと遊んでいかね?」
 この近所に友人がたまに利用する出会いカフェがあるという。根っからのフーゾク派のため、出会いカフェの類は未体験の俺だが、たまに趣向を変えてみるのも悪くはない。
「ふうん、じゃ行くか」

 連れて行かれた店は、雑居ビルにあった。マジックミラーの向こうには、女が5人ほど、退屈そうにケータイをいじったり、マンガを読んだりしている。

 やや殺伐、そしてやや愉快な光景だ。
 何気なく女の顔を順にチェックしていた矢先、妙な違和感を覚えた。50、60点のルックスが並ぶなか、ひとりだけこの場にそぐわないめっちゃ美人がいるではないか。

 しかもあれって……電車のコじゃねえの!?
 ウソでしょ?
 思わず、友人に聞いた。
「あのコめっちゃかわいいんだけど。話したいときはどうするんだっけ」
「店員に言って、トークルームに呼び出すんだよ。でも、ああいうコはスルーした方がいいな」
 ルックスが抜群なのに、誰にも連れ出されず売れ残っているというのは、エンコーの要求金額が相場(別イチゴー)より高いか、お茶や食事が目的の可能性が高いらしい。
 そんなことはどうでもいい。とにかくあのコと話さねば!

電車の娘が

イラスト・清野とおる

 

 

3万で思いのたけを晴らせるなら

「こんにちは〜」
 トークルームにやってきた彼女は、やはりどこからどうみても“電車のコ”だった。

 なんちゅうことだ。まさか、まさかこんな形で会話する日が来ようとは。歓喜の念を押し殺し、彼女の顔を見つめる。

 特に動揺した様子がないあたり、同じ電車に乗り合わせてる相手だとはわかっていないようだ。
「ど、どうも。大学生?」
「そう。いま2年」
「こ、ここはよく来るの?」
「たまに」

「たまに」の割には、実にこなれてるというか、愛想のかけらもない話しぶりだ。

 恐る恐る、キミと遊びたいんだけどいくら払えばいいのかしら的な質問をぶつけると、彼女は即座に答える。
「3でしか出てないし」
 3万のエンコーだ。相場の倍。強気にもほどがある。
 密かに思い慕っていた相手が、ばりばりのエンコー女だったとは興醒めもいいところだが、しかし3万の金でこれまでの思いのたけを晴らせるなら安いものだろう。
「わかった。3万出すよ」
「オッケー」
 ようやく彼女は笑った。     
ホテルに入ってからのドギマギ感は、時間を追うごとに薄れていった。キスは拒否、フェラもゴム付き。さらに挿入後の堂の入ったマグロッぷりを見せつけられれば、さすがの俺もゲンナリだ。
 今も電車でときどき彼女の姿を見かけるが、もはや空気のような存在だ。もちろん手紙は破り捨てた。

 

 

 

本稿は裏モノJAPAN2012年6月号に掲載された記事をWeb版に再編集したものです。

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裏モノJAPAN201206

 

 

 

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