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あるHIV感染者の殺人行為~俺、日本中の人間にエイズをうつしてやろうと思ってんすよ
2016.1.21

エイズ

 エイズになったら?いや、すでにもう感染しているのかも?

 人並に遊んだ経験のある者ならば、誰でも一度は不安を抱いたことがあるはずだ。
 日本での1年間(※2002年)でのエイズ新規感染者は621人。検査を受けていない者も含めれば、その数は膨大に上るだろう。
 同性間交渉や血液製剤による感染が喧伝されたエイズも、最近では10〜20代の若者による異性間セックスでの感染が目立ち、この傾向はますます加速するものと思われる。
 今回、自らの体験を語ってくれたのは、5年前、異性との性交渉でHIV感染した青年(26才)だ。
 エイズになればどうするか?
 以下の告白は、あくまで彼なりの答でしかない。しかし本人の言葉に嘘がないのなら、これこそが若者に蔓延する空気を代表した行動ということにもなる。
 なお、饒舌に思える彼も、実際の現場では始終落ち着きなく貧乏ゆすりを繰り返し、ときに黙り込み、ときに目を潤ませていたことを付記しておく。
 本稿は、延べ4日間の取材で語られた脈絡なく前後する回想を、時系列に沿ってまとめたものである。

 

ナンバさせないために作った噂じゃないのか

 なんでエイズになったか?原因はセックスですよ。血液製剤とか、そんな物々しいもんじゃないです。
 だから、あの誰でしたっけ。川田なんとか君?あんなふうにカミングアウトする気にはなれないすね。やっぱりセックスが原因だとカッコ悪いから。あ、この記事も写真とか載せたら駄目ですよ。約束してくださいね。
 うつったのは5年前になるのかな。21才んとき。大学中退して遊びまくってた時期ですね。

 といっても俺、実家が静岡なんだけど、高校時代からヤリまくってはいたんです。ナンパなんてしょっちゅうだったから。

 だからいつどこでうつされたのかハッキリとはわからないと言えばわからない。ずっと前からエイズだったのかもしんないし。でもまずアイッで間違いないなってのと21んときに出会ってるんで。
 そのころ俺、よく新宿のクラブで遊んでたの。来てる連中とかDJと知り合いになって騒いで、もちろんナンパもしょっちゅう。
 でも病気はクラミジアに2回かかったぐらいで、他には自覚症状なんて全然なかった。

 え、ナンバしたとき?もちろん生ですよ。俺らは普通、生が基本すからね。で、女に「大丈夫か」って聞いて「大丈夫」って言ったら中出し。それって常識なんじゃないの。違うの?へえ、そうなんですか。
 でもみんな、病気のことなんか気にしてなかったなあ。どっちかって言うと妊娠のほうが心配だったんじゃないすか。ま、ガキができたって堕ろすのが当たり前なんだけど、お金の問題とか色々あるからね。
 このころはナンパして屋上でハメたり、5人ぐらいの仲間で1人の女を姦したり、無茶苦茶やってましたよ。いちばん楽しかったんじゃないかな。やっぱ相手はギャル系が多かったかな。
 でもすぐに新宿の店がツブれちゃってね。今度は渋谷のクラブに出入りするようになったの。当時さ、暗闇で青く光る髪の毛ってのを開発した会社があって、そこの知り合いに営業活動を頼まれてたってのもあったのね。渋谷だと流行りそうだし。

 そしたら、そのクラブに見覚えのある女がいたの。新宿の店でもときどき見たことがあった子で、安西ひろ子を小柄にしたような感じ?かなり可愛いくって。年齢? 後で18ってわかったけど、まあ、見た目もそんなもんかな。ギャルですよギャル。
「あ、あの子、前にもいたじゃん」
「そうだね、ナンパしよっか」
 って友達と競争してさ。だけど、これがなかなか落ちなくて。声かけてもツレない感じなの。ただ踊るためだけに来てるようには見えないんだけど、一緒にいる女がガードしてるっていうか。他の男にも付いていかないしね。
 毎週来てたのかなあ。いつも俺ら「あの子ヤリたいよな」って話してたもん。そしたら、その子の知り合いの男が客の中にいてさ。そいつ通しでなんとかしようってことになって。
 なのにさ、その男が「あいつはヤバイよ」っていうわけ。「何が?」って聞いたら、「あいつエイズだから」って。
「え、マジ?」
「ああ、ネタ食ってうつったんだ」
 シャブ射って注射針からうつったって意味ね。クスリは普通に流行ってたから。あのころクラブにいた連中なんて、みんなやってたんじゃないのかな。俺もときどきやってたしね。
 ただ、エイズってのはどうも信じられなくてさ。というのも、誰それがエイズだなんて噂はしょっちゅう飛び交ってたんだけど、そういうのってホントに噂でしかないことが多くて。

 だからそんときも、アキ(仮名)が、あ、その子アキっていうんだけど、可愛い過ぎるから誰かが妬んで流した噂じゃないかとか、男がナンパ」してくんのが面倒だから自分でわざと噂をバラ巻いてんじゃないのかなんて勝手に思ってたわけですよ。
 結局、そのアキにエイズをうつされるんだけどね。そりゃ今思えば、ヤンなきゃ良かったって思いますよ。

 

肌だってキレイだしエイズのわけがない

 最初にアキとヤッたのは、ナンパっていうか、2対2の飲み会みたいなことをした後。クラブに彼女の知り合いの男がいたって言ったでしょ。ソイツにセッティングしてもらったの。

 でもヒドイよね。エイズの女を俺に回すなんてさ。後でソイツ「あんなにエイズだって言ったじゃん」って言うんだけど、それなら俺と2人きりにさせるなよって。
 セックスはそうだなあ、そんなに特徴なかったですね。裸になっても、別に肌に異常があったわけでもないし。俺、エイズつったら、必ず肌に斑点ができるものと思ってたからね。
 もちろん生ですね。中出しまでは、そんときはどうだったかな。覚えてないけど。
 そりゃ自慢しましたよ。ずっと狙ってた子ですからね。友達にすぐ電話かけて。
「昨日、アキとヤッたよ」
「え、ヤバくね-か?」
「大丈夫だよ、全然フツーだし」
 って。すげーのんきだよね。ただ見た目が普通だっただけなのに。
 でもね、その1回だけだったらホントに大丈夫だったかもしれないの。実はその後、俺ら付き合うことになったんですよ。「付き合えよ」「うん」みたいな感じで。やっぱ可愛いしね。
 俺らの付き合うってのも、まあセックスフレンドみたいな関係だから、そんなに真剣じゃないんだけど。彼女は渋谷の洋服屋で働いてるフリーターで、実家が神奈川なのね。俺ん家が日暮里でしょ。だから会うのはたいてい渋谷。ほとんどクラブ行くかラブホ行くかですね。
 あ、そうそう、シャブ射ってるってのはホントだった。脇んとこに、注射痕があったし。でも敢えて一緒に食おうなんてのはなかったですね。俺の前でやってるのも見たことないし。

 

どうせ死ぬんだから薬なんて意味がない

 半年くらいなんともなかったんだけど、最初になんか調子悪いなって思ったのは、風邪引いたときかな。なかなか治らないんすよ。熱は下がってるんだけど、ずっと二日酔いみたいにダルイの。
 でもまだそんときはエイズだなんて思ってないから、普通に生活してますよね。アキにも飽きてきたころだったからナンパもガンガンやってたし。渋谷だとさすがにマズイから六本木とか行って。
 そしたら今度クラミジアになったんすよ。ムズ樺いやつね。前にもなったことあるから、クスリ飲んだらすぐ治るの知ってたし、軽い気持ちで病院行ってさ。
 そこで医者と、前にもなったことがある、いろんな女とセックスしてるって話を交わす中で「最近風邪が治りにくいつす」って言ったら「エイズ検査もしておくか?」って。俺も何も考えないで「そうっすね」って答えて。
 医者からエイズ検査勧めるのって珍しいみたいなんだけどね。良かったんだか悪かったんだか。やっぱ悪かったのかな。あんとき検査しなけりや、今も知らずに平気で遊んでられたのに。
 結果出たのは1週間後くらいかなあ。診察室で医者がすんげえ普通の顔で「心配しないでいいから」って。何ぬかしてんだって思いながら聞いてたら「今はね、発症を遅らせる薬があるから、心配はいらないよ」って言うの。
 それで初めてエイズ検査のことだってわかった。陽性だったってことですよ。

 

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