アンダーグラウンド
生活保護不正受給のほほんライフ 寝てて小遣いもらえるなら働くわけないっしょ(前編)
2015.12.21

 生活保護不正受給

同じような待遇のバイトを転々と……

 大学3年生(都内の三流私立)だった俺は、不安と焦燥に駆られて、毎日を生きていた。秋ごろから始めた就職活動が、笑ってしまうくらい不調だったのだ。

 

 受けた面接はことごとく不合格。いや、面接にこぎ着けられるのはまだマシで、たいていは書類選考の段階で落とされる。それが30社、50社と続くのだから、ヘコまない方がおかしいというものだ。

 

 その状況は大学4年になってもまったく変わらず、夏休みが明けたところで、ついにさじを投げだした。もう無理っ。フリーターで食ってくしかないや。

 

 05年当時は超のつくほどの就職難で、就活をあきらめ、フリーターに身を落とす大卒者はごろごろいた。俺も、そういう時代なんだと納得する他なかったし、バイトで生計を立てつつチャンスを待てば、いずれどこかの会社で正社員にという淡い期待も心のどこかにあった。

 

 卒業後のバイト先は学生時代から続けていた時給1千円のカラオケ店(22時〜6時)にそのまま居座った。ただし、実家からの仕送りがストップしたため、最低でも週5、可能なら毎日働く必要がある。それでも月収は手取り17万前後。そこから、家賃や光熱費など諸経費を除いても、約9万は手元に残る。節約を心がければ、何とかやっていける額だ。

 

 が、いざフリーターを初めてみると、これがキツイのなんの。まず仕事面だが、毎晩のように酔っぱらいに絡まれ、ゲロ掃除に追われた。おまけに店は都内の繁華街にあったので、平日の深夜といえども、オーダーはひっきりなしに入る。もう息つくヒマもない。

 

 むろん、学生時代からやってるバイトだから、それなりに免疫があったとはいえ、毎日のこととなると肉体的にも精神的にもストレスがハンパないのだ。

 

 プライベートでは人付き合いが激滅した。変則的な勤務時間のため、友人と遊びにいくことさえ難しいのだ。自然、暮らしぶりは、職場と自宅を往復するだけの味気ないなっていった。

 

 結局、カラオケバイトは1年ほどしか持たず、その後も同じような待遇のバイトを転々とすることになるのだが、どこに行っても暮らし向きは変わらない。以後4年間、そんなことをダラダラと繰り返すうち、正社員になるという夢も、いつの間にか消え失せていた。

 

生活保護ってそんなにもらえるのか!?

 負け組街道まっしぐらな俺に転機が訪れたのは、2年前のある日のことだ。

 

 何気なく観ていた番組で、生活保護受給者がインタビューを受けていたのだが、その内容に軽い衝撃を受けた。体を壊して働けなくなった20代男性が、国から毎月14万近い金を支給されているというのだ。いっさい働きもせずに、2年間ずっと、ウソだろ?生活保護ってそんなにもらえるのか!?

 

 日々、ツライ仕事に耐え忍んで、つつましく生きて、それでも16、17万の金しか手にできない我が身が急に情けなくなった。

 

 俺も生活保護受けたい!さっそくネットで調べたところ、生活保護を受給するには、大まかに以下3つの条件すべてに当てはまる必要があるようだ。

 

 

①預貯金がない
②家族から経済的な援助を得られない
③働けない理由がある

 

 

 まず①、一人暮らしの人間の場合、口座に入っている金は4、5万以下であればOKらしい。俺の口座には現在、10万ちょいの貯金があるが、申請前に半分使い切ってしまえいいだけのことだ。

 

 ②についても問題はない。両親の営む定食屋はもう何年も前から廃業寸前で、おまけに実家にはまだ中高生の妹と弟、そして年老いた祖母が住んでいる。そんなぎりぎりの状況で、俺に仕送りするなど到底無理な話だ。

 

 問題は③である。心身ともに健康な俺が、どうやって「働けない」ことを証明すればいいのか。

 

 ネットの書き込みには、不正受給を目指すなら精神病患者をいつわるのが一番手っ取り早いとの意見が目立ち、ご丁寧にも、カンタンな演技で精神病と診断してくれる病院名までいくつか挙げられていた。なるほど、試してみるか。

 

「アナタ、統合失調症の疑いがあるね」

 さっそく、ウワサの病院のひとつに足を運び、診察を受けてみた。

 

「気がつくと、ずっと独り言を言ってることがあるんです。誰もいない部屋で、他人の話し声が聞こえたりとか」

 

 深刻ぶって告げると、医師は10分ほど問診をした後で、ノートとエンピツを渡し、木や家、車の絵を描けという。

 

 いかにも病んでますといわんばかりに枯れ木や西洋の古城風、タイヤのない車を描いてみたところ、「だいたいわかりました。どうもアナタ統合失調症の疑いがあるね。とりあえず薬を出すので、しばらく通院してください」

 

 あっさり診断が下った。統合失調症って、マジで適当すぎるだろ。

 

 続いて今度は、区役所の福祉課へ。窓口で生活保護を申請したところ、そのまま担当のケースワーカー(職員・以下CW)と面談することになった。

 

 

 そこで俺が訴えたのは次のようなことだ。

 

 

◯統合失調症を患っており、バイトを続けるのが難しい。診断書が必要なら後日提出する。
◯(実際に通帳を見せながら)口座の残高が5万を切っている。
◯実家も経済的に厳しいので援助が期待できない。
◯車やバイクなどの財産はない。

 

 

 20分ほどの話し合いの後、くたびれた中年然としたCWが口を開いた。

 

「一応、他の銀行に口座がないかコチラでも調査させていただきます。あと明日あたり、家庭訪問してもよろしいでしょうか」

 

 実際の生活レベルをチェックするつもりらしいが、一向に構わない。贅沢品なんざハナから持ってないんだし(パソコン、テレビ、ゲーム機などは贅沢品とは見なされない)。

 

 俺はこの時点でほぼ計画が成功したことを確信した。なぜなら帰り際、CWがいたわるような目で言ったのだ。

 

「おせっかいかもしれませんが、そういう病気なら、できるだけ早く仕事を辞めた方がいいのでは。鈴木さんのケースなら、まず審査は通るハズですから」

 

 自宅に生活保護の決定通知書が届いたのは、それから10日後のことだった。

 

トントンか、むしろ得した計算になる

 かくして俺は、なんの迷いもなくバイトを辞めた。
 これから毎月、俺が国と区から受け取る額は家賃手当として5万円(都内の場合、上限は5万3千円)に生活費が約8万7千円の、合計14万弱。

 

後編はこちらから

 

 

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