アンダーグラウンド
私はこうしてヤクザへの報復を果たしました~美人局の恨み、晴らさずに入られようか(後編)
2015.12.19

bsPAK15_saikindeaiganaina-本稿は後編です。前編はコチラからご確認ください。

 

広域暴力団の三次団体を温泉に

 狙いは決まった・報復は、三島が最も痛手を被るであろう、ヤツのシノギを潰すことだ。

 

 

 ××温泉には、ハニーレディ以外に2つのコンパニオン業者が存在している。いずれも在籍十数人前後でサービス、料金ともに内容は横並びだ。

 

 が、ここ最近、その均衡が崩れ始めているらしい。ハニーレディの女が簡単に寝るという噂が広まり、人気が集中しているのだ。

 

 私はまず手始めに、全国の旅行代理店が利用する『アクセス』や『エーブル」といったネットワークにハニーレディの警戒情報を流した。業界内で非サービスリストと呼ばれるもので、掲載された店はNGの略印を押される。効果は少なからず期待できるはずだ。

 

 が、まだまだ甘っちよろい。コンパニオン業者をヘコませるには、何と言ってもNOSHOW、早い話がドタキャンだ。

 

 予約作業は通常、旅館や旅行代理店から行われる。その際、「レート(値段)」や「1.5(1時間半こなど、専門用語を駆使すれば、相手は何の疑いもなく偽予約を受け付けるはず。1日10名の予約をキャンセルするだけで7〜8万の損害はカタイ。狭い温泉街だから、信用もガタ落ちだ。

 

 こうした地味なイヤがらせを企てる一方で、私は一つの計画を推し進めていた。

 

 私のお得意さんに、大阪で一家を構える小湊組(仮名)なるヤクザがいる。これまで何度か温泉旅行を世話し、そのたび緊張を強いられていたのだが、彼らを××温泉に連れていきひと騒動起こさせるのだ。

 

 若頭・城島(仮名)は大の女好きである。耳元で「すぐにヤれますよ」と千里の噂を吹き込めば、その気になるに違いない。そして、そこに三島らが乗り込んできたら…。

 

 我ながら大胆な計画とは思ったが、田舎ヤクザの三島が、某広域組織三次団体の若頭を前に平身低頭している姿を想像するだけで笑いが止まらない。実行あるのみだ。

 

 02年3月、私は10名の小湊組員を引き連れ、××温泉のあるZ駅に降り立った。

 

 薄紅色の送迎バスに全員を乗せ、ホテルにチェックイン・全員にルームキーを手渡した後、ハニーレディに予約確認の電話を入れる。

 

「もしもし、○▼ツーリスト梅田支店の森田です。宴会のコンファームお願いします」
「リスト出しますのでお待ちください。…え〜つと、8名スーツで、2名バニーガールでよろしいですね」

 

 電話の相手は千里だった。少し声がやつれているが間違いない。

 

 午後6時、楓の間で宴会が始まった。今回私は、城島に一声かけ、酒の席から外してもらってる。チーママを狙えと伝え、あとは運を天に任せるだけだ。

 

 が、こういうときに限って、うまく事が運ばない。若頭が突然私を宴席に呼びだし、カラオケの進行役をやるよう命じたのだ。

 

 恐る恐る舞台のそばに立つと、会場からヒューヒュー声が飛んできた。みな、相当、酔っ払っているようだ。肝心の千里は…、しっかり若頭がキープしている。

 

「え〜、それでは進行役を務めさせてもらいます森田と…」

 

 正直、生きた心地がしない。千里に気づかれたら一巻の終わりだ。

 

もうそろそろ手を引くべきか

 翌朝は5時に目が覚めた。城島と千里はあの後どうなったのか。気になって仕方ない。8時。朝食会場に城島が現れた。目をこすっているが、さほど変わった様子はない。

 

「おはようございます。昨晩はいかがでした?」

 

 下卑た笑いを浮かべ、遠まわしに探りをいれた。

 

「いや〜、ほんまに工口い女やったわ。森田君も一緒に楽しんだらよかったのに、あははは」

 

 何たること、聞けば若頭は、酒で前後不覚になった千里を外に連れ出し、駐車場の裏で強引にヤッた挙句、文句があるなら大阪の事務所まで来いと捨て台詞を吐いたという。私は、ただ顔を引きつらせながら笑うしかない。

 

 

 計画は見事に失敗した。が、一方でイヤガラセの効果は確実に出ていた。地元代理店の話では、年明けごろからハニーレディの客足が激減、在籍している女のコも次々止めているという。

 

 さぞ、三島の組内での立場も危うくなっているに違いない。

 

 しかし、ヤツのもう一つのシノギであるストリップ劇場は、そこそこ賑わっているらしい。温泉街にありがちなショボイ劇場ではなく、過激なSMショーを売りに観光客以外にも客を呼び、週末になると満席になることも珍しくないという。

 

 

 どんな手を使ってもいい。そのストリップ劇場を潰すことはできないものか。警察へ密告するのも一つの手だ。

 

 が、あれだけ繁盛して、これまで警察が動いてないことから考えれば、三島が地元署に手を回しているのは間違いない。もうそろそろ手を引いた方が正解かもしれない。完全に溜飲が下がったわけではないが、これ以上動いて、本業に支障をきたすのも問題だ。

 

 くすぶった怒りを抱えたまま、仕事に没頭していたある日、親戚にとんでもない上客を紹介してもらった。警友会。警察OBで作った親睦団体で、今回は5名ばかりの有志旅行を世話してほしいという。

 

 絵はすぐに浮かんだ。彼らを××温泉のストリップ劇場に連れて行き、過激なSMやまな板ショーを見せたらどうだろう。大阪と石川では管轄は遠く離れているが、警察は縦の関係が絶対と聞く。少なからず影響は出るのではなかろうか。

 

十三でもようせんわ。たいがいにせいよ

 旅行当日。私は警友会一行を特別チャーターの豪華バスに乗せ、お寺、海岸、温泉にと案内した。

 

 

 彼らは終始ご機嫌だった。当然である。通常の半額近い料金で、豪華な食事まで用意させたのだ。行きの電車では終始無言だった元警部も、宴会では大はしゃぎだ。

 

「みなさん、この後はいかがしましょうか。外にいいお店があるんですが」
「若いオナゴはおるんか」
「わかりました・大阪から奥さん、呼んできますわ」
「アカン、アカン、ガハハ」

 

 タクシーを呼び、ストリップ劇場に出向いたのが午後0時。断られるかと心配もあったが、酒の威力は強い。みな、すんなりと席に付いてくれた。客の入りは4割強というところか。

 

 5人は最初、顔をにやつかせながらステージを楽しんでいた・が、その中身が過激になっていくにつれ、しだに表情から笑みが消え、ついに『男と女のアナルバイブショー」で、元警部が苦々しく言い放った。

 

「十三(十三ミュージック。大阪の有名ストリップ)でも、ここまでようせんわ。たいがいにせえよ」

 

 場の雰囲気を察した私は、5人を外に連れ出し、口直しのスナックへと案内した。誰もストリップのことは一言も触れなかった。

 

 数カ月後、再び××温泉に出向いて腰を抜かした。ストリップ劇場が跡形もなく取り壊されていたのだ。

 

「ああ、年末に手入れ入ったんですわ」

 

 サブ代理店の人間が、事も無げに言う。筈友会から話が回った結果だろうか。それとも自滅か。いずれにせよ三島はこれで終わったに違いない。

 

 そして、私は今年の春になって、偶然ヤツを目撃する。ヨレヨレのカステルバジャックを着て、場末のスナックで荒れ狂うように酒を飲む男。なぜか、足下には松葉杖が置かれていた。

 

「この先、どうなるか、わかつとうか?」

 

 三島が脅した台詞を、そのとき私は心の中で静かに咳いた。

 

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