アンダーグラウンド
私はこうしてヤクザへの報復を果たしました~美人局の恨み、晴らさずに入られようか(前編)
2015.12.18

私はこうしてヤクザへの報復を果たしましたトビラ

 

 もしヤクザに弱みを握られ、大金を脅しとられたら、皆さんはどうするだろう。泣き寝入りするか、警察に訴えるか。いずれにせよ、個人的に仕返しを考える人など皆無に近いだろう。

 

 一般人がプロに刃向かっても、逆に大きな傷を負うのがオチ。それが常識というものだ。しかし、私はどうしても許せなかった・温泉街で美人局にハメられ、大金を脅し取られた屈辱。私を編したヤクザに報復を果たさずにはいられなかった。

 

美人のチーママを飲みに誘い

 旅行代理店に勤務する私が、某製薬会社の社員枢名を引率、石川県××温泉の旅館大和屋(仮名)に出かけたのは今から2年前、02年10月のことだ。

 

 みな研究員とあってか、物静かな人が多い。コンパニオンを配した宴会も盛り上がりにはほど遠い状況だった。

 

 添乗員の私は笑顔でお酌に回り、自ら歌を唄った。少しでも場を明るくするためだが、コンパニオンのチーママが高橋ひとみ似の美人とあって、いささかハシャいでいたのも事実だ。

 

「さっきはありがとう」

 

 

 宴会が終わり、ロビーで一息ついてたところで声をかけられた。チーママだった。

 

「今日のお客さん、大人しかったので助かりました」
「ええんです。仕事やし」
「今後も晶眉にしてください・ここは都会のお客さんがおらんと何もできないですから」

 

 歳は27、28か。身長160前後の細身で、スーツの下からフエロモンがムンムン漂ってくる・にしても、ええ女やなぁ。下心があったのは否定しない。だから、軽く口が開いた。

 

「あの、ドコかいい飲み屋さん、案内してくれません? 次のお客さんにも紹介したいし」
「え~、今日のお客さん、放っておいてもいいの」
「あはは。みんなカラオケ行く言うてたし」
「…そしたら後で電話しますので、携帯教えてもらえます?」
「え?」

 

 正直、驚いた。添乗員と懇意にしておくのは、彼女にとってもメリットは少なくない。が、まさか個人的とも言える誘いに乗ってくるとは・私は俄然、浮き足だった。

 

 

 部屋で旅館差し入れのオニギリを食し、支店への報告書を書き上げること1時間。ブルルルルと携帯のパイプが鳴った。チーママからだった。すでに小料理屋で待っているらしい。

 

 

 慌てて浴衣を剥ぎ取り、ジーンズに着替えて旅館を飛び出した。それがよもや不幸の始まりだったとは、気づくはずもない。

 

アチコチで豆さんを好き勝手にしとるんか!

 川岸の石垣伝いに小走りで10分。濃紺の古びた暖簾をくぐると、カウンターの奥にラフな私服姿の彼女がいた。名は千里(仮名)というらしい。地元出身の27才で、短大時代は私の実家がある金沢で過ごしたらしい。

 

 お酌を交わしつつ目の前の美人の話に耳を傾ける。長い添乗員生活でもなかなか巡り会えない幸運。何としてもモノにしてやる。

 

 果たして、願いは叶った。1時間半ほど冷酒を飲み交わし、すっかり打ち解けたところで、私と女は店を出てホテルに足を向ける。ごくごく自然な流れだった。

 

 事態が一変したのは、彼女の肉体を味わい、満足気にビールを飲んでいたときだった。

 

 ドンドン

 

 突然、入り口のドアが鳴った。誰だ?

 

「すんません。大和屋ですが」

 

 大和屋? なぜ旅館の人間が私の居場所を知っている。もしかして、客にトラブルでもあったか。

 

 慌てて扉を開けると、見知らぬパンチ頭が立っていた。下はジャージ、上はカステルバジャックのセーター。見るからに、その筋の男だ。

 

「こら、自分が何しでかしたかわかつとんのやる」
「は?」
「人の商売道具に手え出しくさって、トボけんのか、のぉ?」

 

 美人局だ…。一気に体から血の気が失せていく。振り返り女を見たが、布団を被って動こうともしない。そのとき、

 

「アイダダダダ…」

 

 脇にいた2人の子分格が、私の右腕を背中の方に絞り上げた。

 

「な、なにすんですか」
「こいや〜!」

 

 口にさるぐつわをハメられ、問答無用で黒塗りの中古ベンツに乗せられた。

 

「事務所で話すよって」
「…………」
「別に殺さへんし、そうこわがるな。兄さん、いくつでんねん?30ぐらいか?」

「うぐっ…」
「ほお。ワシとそげlかわらんのぉ。で、あれか。添乗員さんは、アチコチで豆さんを好き勝手しとるんか。おっ!」

 

 パンチの堅い拳が下腹部に飛ぶ。強烈な痛み、そして恐怖が体を支配する。

 

 10分後、車が朽ちた雑居ビルの前で停車すると、男達は私をガムテープで後ろ手に縛り、2階の一室に放り込んだ。もはや動く気力もない。口の中に、泡みたいな唾が大量に溢れ出ている

 

 それから、どれだけ時間が過ぎたかわからない。突然、扉が開き、パンチ頭がさるぐつわをほどいた。

 

「この先、どうなるか、わかっとうか?」

 

 ドスの利いた声でヤツは言う。選択肢は2つ。80万払って無事大阪に帰るか、人生を棒に振るか。そ、そんなもの答は一つしかない。

 

「か、必ず払いますから1週間待ってください。親に借りてでも、絶対にお支払いしますから勘弁してください」

 

 地面に額をこすりつけ、私は懇願した。

 

「そうか。話、わかってくれたか。ならええんや」

 

 ようやくガムテープから解放されたが、足がすくんで立ちあがれない。体も震えたままだ。それでも、どうにか事務所を這い出た私に、背後からパンチが下品に笑った。

 

「おのれのチンチン、小さかったってなぁ。ハハハ」

 

 屈辱で、思わず涙がこぼれ出た。

 

どうにも怒りが抑えられない

 翌日、帰阪すると同時に金策に走った。身元はぜんぷ押さえられている。逃げようがない。

 

 

 警察に連絡する気はなかった。ハメられたとはいえ、女を抱いたのは確か。事が明るみになれば、会社にいられなくなるのはもちろん、次の職場も見つからないだろう。

 

 とにかく、ここは金を工面するしかないのだ。でも、80万なんて大金をどうやって?悩んだ挙げ句、私は、あろうことか自社の倉庫から、AD(代理店割引券)とSF(株主優待券)を盗み出し録金券ショップに横流ししてしまう。管理の甘い我が社のこと、発覚する恐れはないと踏んだ。

 

 5日後、指定の口座に金を振り込む。再度、脅されたら、覚悟を決めて警察に駆け込むつもりだったが、1ヶ月が過ぎてもその気配はない。

 これでよかったのだ。このまま何事もなかったように暮らしていけばいいのだ―――。

 

 私は無理矢理自分を納得させようと努力した。が、できなかった。布団に入るたびパンチの顔が頭に浮かび、腸が煮えくりかえって仕方がないのだ。

 

 

 怒りは日を追うごとに増幅していった。許せない。絶対に許せない。すでに、心の中には復讐の2文字がしっかり浮かび上がっている。

 

 

 だが、相手はヤクザ・マトモに喧嘩しても勝ち目はない。何かいい手段はないか。

 

 幸か不幸か、私は、月に一度は仕事で××温泉に足を運ぶ。まずは、地元のサブ代理店(子会社みたいなもの)にコンパニオン業者の裏を探らせてみたらどうだろう。

 

 1週間後、再び××に出向いた私は、ツアーの空き時間を利用して代理店を訪れた。10畳ほどの狭い店内には、人のよさそうなオヤジが座っている。

 

「あのな、今日は、ちと調査に来てんねんけど」
「ええ、なんのです?」
「本社に、客から苦情が出ててな。ハニーレディ(仮名)ってコンパニオン業者知っとるやろ。あの後ろってドコなん?」
「たぶん吉岡組(仮名)やと思いますけど…」
「責任者ってわかる?」
「さあ、そこまでは…」

 

 

 美人局の被害者がいれば、何らかの情報が出回っていると思ったが、とりあえずその様子はなさそうだ。

 

「タクシーの運ちゃんか旅館の番頭さんにそれとなく聞いといてくれへんかな? 資料作らなあかんねん」
「わかりました」

 

 地方と都市部の代理店は互いの営業のため、情報交換を盛んに行っている。特定の業者を調べたところで、不審がられる怖れはない。

 

 1ヶ月後。再び温泉街の代理店を訪ねると、予想以上の成果が上がっていた。責任者の名は三島研司(仮名・35才)。地元吉岡組の幹部で、組からコンパニオンとストリップ劇場を任されているという。千里は三島の情婦らしい。

 

 

続きは後編(コチラから

 

 

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