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秋葉原をウロつきモテない男に声をかける……宝石キャッチ嬢VS編集部員・仙頭7時間の攻防!
2015.12.14

宝石キャッチ嬢

 東京・秋葉原の駅前に、美人の路上キャッチが出没している。

 

 

 通行人の男に声をかけては、なにやら売りつけようとしているらしい。

 

 

 ヤツらの手口、じっくり拝見してやろうじゃないか!

 

決戦前夜 秋葉原にて

4月下旬、平日の午後7時。秋葉原駅。仕事帰りの人通りで混雑する「電気街口」で白いスーツの女が通行人の男に声をかけていた。30代前半くらいの美人である。

 

 通行人のフリをして近付くと、女が口を開く。

 

「すみませ-ん。アンケートをお願いしてるんですけど」

 

 彼女は首から下げた名札カードをかざして見せた。

 

「私、●●にあるジュエリーショップの相田(仮名)と言います」

 

 宝石か。

 

 ふ~ん、男に宝石をどうやって売るつもりだ。アンケート用紙には、質問が4つ並んでいた。

 

 最初の3つは腕時計に関するもので、いくつかのデザインから好みを選べとか、パートナーの女性とペァウォッチを付けたいか、などの問いだ。

 

 そして4間目は、結婚に関する質問だった。

 

「お兄さんは結婚してるんですか」
「まだだけど」
「じゃあ、いつごろ結婚したいですか?」
「まだわかんないな」
「でも、将来は結婚したいと思ってるでしよ?」
「ですね」
「そのときは、相手に指輪を渡さなくちゃいけないじゃない」
「…まあ」
「でしょでしよ。うちはジュエリーショップだから、そういうエンゲージリングのお話をさせてもらいたいな」

 

 なるほどね。結婚指輪の準備をさせようってか。まだ彼女もいないだろうアキバの男どもにそれはどうなんでしょ。アンケート用紙の最後には連絡先の記入柵があった。素直に記しておこう。アンケートを書き終えるのを確認し、彼女は「また連絡しますね」と足早に去って行った。

 

「センちゃんって呼んでいい?」

 その日の夜、見知らぬ携帯番号からの着信があった。相田からだつた。

 

「もしもし、今大丈夫ですか?」

 

 時刻は夜10時半。常識のある人なら電話は控えるべき時間帯である。

 

「今日はありがとう。あれから真っ直ぐ家に帰ったんですか?」

 

 彼女は親しげにしゃべり始めた。仕事は何?休みはいつ?好きな食べ物は?たわいもない雑談をするうち、口調が次第に馴れ馴れしくなってきた。

 

「私、仙頭さんのことをセンちゃんって呼んでいいかな」
「ああ、いいけど」
「センちゃん、週末にでもまた会えないかな」

 

 デートのお誘いか。結婚相手がいないなら私に買ってよ、と迫ってくるのだろうか。

 

「ねえねえ、お店に来ちゃいなよ」

 

 お店かよ!居酒屋あたりでしっぽり色恋営業をかけてくるんじゃないのか。

 

「私は、センちゃんがいつか結婚するときに必要な、エンゲージリングの話をしてあげたいの」
「……はあ。」
「センちゃんは、まだ結婚が未定だから、エンゲージリングの話とかピンとこないんでしよ。だけど、それがどう大切なのかを話したいの」
「…はあ」

 

 あえて何も反論せずに聞いているオレは、素直なカモとでも思われたようだ。

 

「いいモンはいいと薦めるよ。買う気まんまんで来なくてもいいけど、絶対に買わないぞ、という気持ちでは来ないでね」

 

 バカ野郎、絶対に買わない気持ちで行ってやるよ!

 

テレビで高知城みたよ すごくキレイだった

 週末の夕方5時。店は5階建ての締麗なビルに入っていた。看板もちゃんと出ている。さて、中で何が行われてるのやら。

 

 相田はビルの前に立っていた。

 

「センちゃん、こっちこっち」

 

 エレベータで4階へ。フロアには、壁に沿ってテーブルが5〜6台並んでおり、それぞれ美人の女性スタッフが、おそらくオレと同じようなパターンでやってきたらしき男と向かい合って座っている。

 

 オレは一番奥のテーブルに通された。

 

「今日は来てくれて本当にありがとう」

 

 

 相田は向かいに座ると、一枚の紙切れを取り出した。

 

「まずはこれを書いてもらいます。あ、一番上の枠組みのとこは飛ばしといてね」

 

 アンケートだった。「いつ結婚したいですか?」「血液型は?」「1ヶ月の出費の内訳」などが並んでいる。オレが書き終えると、彼女はそのアンケート用紙をチェックすることなく、テーブルの横においた。

 

「センちゃんは、高知出身とか言ってたでしよ?」
「そうだけど」
「テレビで高知城を見たよ。スゴクきれいだったよ。それからね」

 

 修学旅行の話、自分自身の出身地の話題、東京での暮らしなどなど、彼女の雑談はなんと1時間もつづいた。よくもまあそんなにネタがあるもんだ。

 

 ようやく彼女が先ほどのアンケートを持ち出した。

 

「じゃあ、さっき飛ばした枠組みのとこ見て」

 

 そこには『法令に基づき、適正に販売を行っております」と書かれている。

 

「これは、事前にウチの目的をちゃんと聞きましたよ、という確認なの」
「……はあ」
「私、電話でウチは宝石屋さんだから宝石を薦めるよ、と伝えたよね?だからセンちゃんには、今日は了解して来てますよ、というサインをしてほしいの」

 

 法律に問われないためなのだろう。ムダ話で好感度を上げてからサインさせるとは狡猾だ。はいはい、了解してますよ。どんどん薦めてちょうだいな。

私もお酒好き どのへん行くの?

 相田が引っ込み、サイン担当の先輩とやらがやってきた。これまた美人だ。イスに座ると、彼女は小さなビニール袋を差し出してくる。

 

「はいプレゼント」

 

 お香だった。雑貨屋で100円くらいで売ってるシロモノだ。

 

「今日の交通費にど-ぞ」
「ど、どうも」
「お香でリラックスとかしないの?」
「しないけど」
「じゃあ、普段のリラックス方法は?」
「…飲みに行ったり」
「私もお酒好き。ちなみにどこらへん行くの?」
「新宿とか」
「新宿かあ。ちなみに新宿ならやっぱ東口?」

 

 彼女はその後も、ちなみにちなみにと雑談を展開していった。なんとこれまた1時間もだ。ようやく目的のサインに移ったかと思えば、これはほん数十秒で終了。さっさと去っていく。

 

 さすがにもう気付いた。こいつわざと時間を引き延ばし、オレの思考能力を麻痺させるつもりなのだ。相田も先輩も、ちょうど1時間で席を立ったのは休憩のローテーションが決まっているのだろう。

 

ダイヤモンドじゃないといけないの

 午後7時10分。相田が戻ってきた。

 

「じゃあ、そろそろ説明を始めていこうかな」

 

 そろそろとはムカつく言い方である。2時間もダラダラしたくせに。

 

「うちの店は、担当さんとお客様の関係を大切にしてるの。センちゃんの場合、担当は私になるの」

 

 彼女が紙に、男、女、宝石店などの絵を拙いていく。

 

「男の子はセンちゃん。女の子は私ね」
「…」
「担当さんとお客様の関係は、商品を買ってもらったあとも、ず~っと続くの」
「…」
「だから私は、ず-とセンちゃんの担当さんとして、いろんな相談に乗ったりするの」
「…」
「商品のことだけじゃないよ。例えばセンちゃんが好きな人がいるなら、そんな相談にも乗るの」

 

 なぜこんな小娘にオレが相談するのか。あんた、他人だし。とは突っ込まずに、うんうんうなずいていると、いきなり話題は結婚指輪に飛んだ。

 

「エンゲージリングは、ダイヤモンドじゃないといけないの。何でかって言うと、プロポーズには固い意志が必要だから」
「…硬い石ってこと?」
「そうなの。センちゃん当たり」

 

 なぞなぞかよ-

 

「正解したセンちゃんに、今日は特別にダイヤモンドを見せちゃいます。じゃあ、見せる担当さんがいるから呼んでくるね」

 

 何気に時計を見る。また1時間が経っていた。ローテーションの時間か。

カズのプロポーズがすごく素敵なの

 午後8時10分。商品担当の女がやってきたこれまた、目を奪われるほどキレイだ。
「これがダイヤモンドで~す」
 彼女はダイヤを並べると、ルーペを差し出してきた。

 

まさか仙頭は宝石を買ってしまうのか!? 続きは次ページへ  

 

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