アンダーグラウンド
NYのショーに出るからと言って衣装代を…… ネカマになりすまし250万を搾り取ったオレ
2015.12.11

自由の女神

 出会い系サイトで現役モデルと称したネカマとなり、メルトモを募集。食い付いてきた連中に3.4回のやりとりの後、〈今の仕事を始める前に出演した裏ビデオを4千円で買ってくれませんか?葵より〉

 

 もちろんウソ。誘いに乗ってきた相手には、手持ちビデオのダビングを送付する――。

 

 裏モノ読者には何とも古典的なダマシの手口だろう。いまさら引っかかるヤシなどいないと思われるのも当然だ。が、どっこいまだカモはいる。

 

 ビデオを先に郵送し、料金を後払いにすることで、バカなエロおやじが手を出してくるのだ。ほんの1カ月で約5万の上がりは上出来である。

 

 ちなみに、カネはいつもオレの実名口座に振り込ませていた。架空口座を用意するまでもなく、誰もこれしきで訴えやしまい。事実、オレに危険が及ぶことはなかった。

 

100キロ超デブが紙袋を抱えて……

〈会社の同僚も欲しいっていうから5本買うよ〉

 

 ある日、タケシと名乗る男からメールが届いた。ビデオを手渡ししてほしいという。

 

 手渡しはできない相談だが、一度に5本はおいしすぎる。う-ん、とりあえず会う約束だけ交わして、後はテキトーにゴマかすか。

 

 2日後、約束の1時に新宿駅南口に到着。すぐにタケシにメールを入れた。

 

〈ごめん。急用で行けなくなったのお〉
(えー!マジでマジで?〉
〈心配しないで。代わりに私の男友だちにビデオ持って行かせたから。タケシさんはどんな格好してる?〉
〈黒のTシャツにジーパンだよ。てか、友だちって誰なの?技致られたりしない?やっぱ帰ろうかな…〉

 

 何とも臆病なタケシである。くそっ、手こずらせやがって。

 

〈じゃ5分後、駅のロッカーに入れておくから取りに行ってよ。1番下の列の右端。カギはかけないから急いでね〉
(うん、それなら大丈夫〉

 

 3分後、ロッカー付近でスポーッ新聞を読んでいると、八アー八アー。気持ちの悪い呼吸音が耳に飛び込んできた。何事かと顔を上げると、目の前に100キロはある汗かきデブが通り過ぎていくではないか。裏ビデオの入った紙袋を大事そうに抱えて。ぎゃははは、キショッー!

 

キミの夢のためにお金を貸すよ

 自称岩手の20才サラリーマン、和夫はタケシを超えるバカだった。

 

〈葵ちゃんは、あと何本ビデオ売らなきゃいけないの?〉
〈15本くらいかな〉
〈よし、全部買ってやるよ〉

 

 まったく意味がわからないが、翌日にはちゃっかり6万円振り込まれているから驚きだ。ほほう。こりや大金引っ張れるかも。

 

〈和夫さん、この前はありがとう。ねぇ私のパンティ買ってくれないかなぁ?〉
〈葵のパンティ?買う買う〉
〈7千円なんだけどいい?〉
〈もちろんだよ〉

 

 翌日、高田馬場にあるブルセラショップで洗濯済みパンティを1千円で購入し、和夫に送付する。

 

〈葵ちゃんのパンティ届いたよ。ありがと。今度は汚れたのが欲しいな? 1万出すから送ってよぉ〉

 

 この変態め。さっそく同じ店で白のパンティを買い付け、ヤシの要求どおり大便を布に塗り込んだ。

 

〈やっほ。葵のくつさ〜い下着、肌身離さず持ってるよ。今日も会社の便所でたっぷりニオイ唄いじゃった〉

 

 もはや死角ナシ。一気に畳みかけてやりますか。

 

〈小さなショーに出演することが決まったけど衣装代がないの。貸してもらっていい〉
〈そうか。よし、何とかするよ、キミの夢のために〉

 

 これで20万。

 

〈食費がなくて大変なの〉

 

 これで10万いやぁ、惚れ惚れする〝抜け作″ぶりだねえ。

 

どう自然に葵を死なせるか

 やがて和夫は頻繁に〈会いたい、声が聞きたい〉というメールを寄こすようになった。姿はおろか、声も知らぬ女に大金を貸し、不安になったのだろう。

 

 ウザいなあ。んじゃ葵をニューヨークにでも行かせるか。がはは。これで電話をくれなどと言えんだろ。

 

〈ニューヨークは最高だよぉ。こっちでもショーに出ることが決まったんだけど、衣装代がなくて〉
〈え、ダメだよ。もう貸せないよ…〉
〈ショーに出られないと日本に帰れないの。お願い〉

 

 何だかんだ言いつつも、葵に会いたい一心の和夫。すぐに20万を振り込んできた。日本‐ニューヨーク間でメールをやり取りすることには、少しの疑問も感じないらしい。

 

〈これから日本に帰るんだけど飛行機代貸して〉

 

〈新しいショーの主演が決まったから、やっぱり帰れなくなっちゃった。また衣装代貸して〜〉

 

 気がつけば、和夫から搾り取った金額は250万にも膨れ上がっていた。和夫も貯金を使い果たし、もう1銭も手元にないという。

 

 が、手は緩めなかった。必死になだめすかし、さらにサラ金から50万借りさせる。

 

〈日本に帰ったら、全額返すから待っててね〉

 

 むろん、ここまで来て、葵を帰国させるワケがない。ブロードウェイの監督に気に入られた、友だちが病気になったなどなど、何かと理由をこじつけ、どうにかこうにか滞在を引き延ばすのに躍起だ。

 

 その一方で、ウソがバレぬよう、時差を調べ、夜中にこんなメールを送付。

 

〈カズくん、おはよ〉

 

 

ったく、バカを編すのもラクじゃねーな。

 ニューヨークに住み始めてかれこれ1年半が過ぎようとしている。和夫がオレの口座を知っている以上、安易にバックレるワケにいかないのだ。

 

 今後の課題は、どう自然に、怪しまれず、葵を死なせるか。それを解決するまでは、ゆっくり眠れそうにない。

 

 

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