テクニック
不倫、シングルファザー、難病…。可哀想ブログで共感・同情を誘い女性を喰いまった罰当たりなオレ
2015.12.8

ほくそえみ

 『セカチュー』に始まった泣ける話ブーム(2008年当時)は『いま、会いにゆきます』『私の頭の中の消しゴム』『恋空』とまだまだ勢いが衰えない。

 

 さほど世の女性たちは“悲話”に飢えているようだ。

 

 ならばどうだろう。悲劇の主人公になりすまし、 可哀想ブログ を立ち上げれば、わんさか女性たちが寄ってくるのではなかろうか。

 

惚れ直した元カノはすでに他人の妻だった

 06年の秋、高校時代の同窓会で10年ぶりに元カノと再会した。思い出話に花が咲き、気がつけばそのままホテルへ。その後も、毎週のように会うようになった。

 

 改めてつきあってみると、なんで彼女と別れたのか不思議に思うほど気も体も合う。二度と手放したくないと思ったが、そう簡単にはいかない。彼女は、結婚していたのだ。

 

 5才年上の旦那は一流企業に勤めるサラリーマンで、幼稚園に通う娘が一人。幸せを絵に描いたような家族である。

 

 彼女は「決して遊びじゃない。もっと早く再会したかった」と言うものの、オレとやり直そうと迫れば、離婚はできないと泣くばかりだ。

 

 どうすりゃいいんだ。苦しい胸の内を友人に明かすこともできず、以前から付けていたブログにぶちまけた。

 

〈オレにとって彼女は唯一の人なのに、彼女にとっては単なる気晴らし相手か?〉

 

 別に誰かに読んでほしいと思ったわけでもないが、書き続けるうち、コメントが付くようになった。

 

 たいていは〈早く別れた方がいいですよ〉というアドバイスだったが、カスミと名乗る女性は違った。

 

〈柳本さんは純粋な方なんですね。その気持ち、彼女に届くといいですね〉
〈○○動物園へ行ったって書いてありましたが、××市にお住まいなんですか?私もそうです。よかったらメールください〉

 

 同情しつつもオレに興味を持ったらしい。言われるままメールを送信すると、戻ってきたメールには、〈彼女を一途に思う気持ちにキュンときた〉と書いてある。〈私でよかったらお話聞きます〉とも。

 

 そこまで言われ断る理由はない。週末の夜、実際に会うことになった。

 

健気な父親を演じつつ下ネタを織り交ぜる

 カスミは仲間由紀恵を少し太めにした感じの26才だった。何でも前にいた会社で、自身も不倫経験があるらしい。

 

 話は盛り上がり、自然と居酒屋の個室でキス。そのままホテルに流れた。会う前は下心など微塵もなかっただけに思いもよらぬ展開である。

 

 この状況、結果的には出会い系で会うのと変わりはないが、ブログを介することで女性側に大義名分が成り立つらしい。しかも、ブログの内容でオレの人柄がわかった気になるし、悲恋の主人公=いい人という単純な思いこみも生じたようだ。

 

 この一件で、オレは目覚め、元カノへの思いはトーンダウンした。彼女もカスミと同様、昔の彼氏と盛り上がり、ちょっとした気分転換を図っただけのこと。つまり女は、日常にない悲話に滅法弱いのだ。

 

 そこで今度は意図的に、女性が同情しそうな 可哀想ブログ の第二弾を開設することにした。設定は、小学生の娘を持つシングルファーザーである。

 

 家庭を顧みずに働くうち、カミさんに逃げられ、娘と向き合いながら獅子奮闘する父親——。人気を博した草なぎ剛のドラマそのままだが、成長していく娘の体へのとまどい、下着や洋服を買う際のバツの悪さなど、書こうと思えばいくらでも材料はある。

 

 ミソは、健気な中にも下ネタを織り交ぜることだ。

 

〈娘の成長が唯一の支えだが、このまま一人で歳を取っていくのかと寂しさもある。特に元気のいい朝は〉

 

 これがあるとないでは、会ってからの展開がまるで違う。地味にブログを書きつづり、ようやく1人の女性をゲットした。

 

〈私も同じ状況なので、情報交換しませんか〉という29才のシングルマザー。ただ、ここまでたどり着くまでに2カ月は、あまりに効率が悪すぎる。

 

治っても治らなくてもキミが最後の恋人だ

 可哀想系でも、もっと食いつきのいいテーマはないか。主なプロバイダのブログランキングを調べてみると、こぞってアクセス数を稼いでるサイトがあった。難病モノだ。

 

 病気を装うとはあまりに不謹慎。わかっていながら、オレは設定を考え始めた。

 

 会社の健康診断で異常が出て、精密検査を受けたら癌と診断された。ごく初期で、手術して切ってしまえば完治の可能性も高い。ただ、発生から5年で生存率5割が癌患者の実態もある。結婚話の出ていた彼女に打ち明けたら、なんとなくよそよそしくなり、自分から別れを告げた。1人で病と闘うのはツライ——。

 

 ネットで調べた治療法やクスリの名前を散りばめ、雰囲気だけイケメンに見える思いっきり紗をかけた写真を貼った。さらには癌でなくなり映画化もされたプロサーファー飯島夏樹氏の本から、それっぽいセリフをパクり、半月ほど地道にブログを書き進める。

 

 果たして、予想を超えるコメントが付いた。が、どれも心配や励ましばかり。このまま可哀想キャラを演じていたら、たとえ会えてもシンキ臭くなるだけだろう。

 

 そこで、ひとひねり。

 

〈心から愛してると言える人に出会いたかった〉
〈いまなら一緒にいるだけで2人出会えたことの奇跡をかみしめられるのに〉
〈完治したら、しばらく別荘で療養しよう〉

 

 恋愛モード全開で、さりげなく金持ちをアピールをしたところ、さらに食いつきが良くなった。

 

〈支えになりたい〉〈看護士です〉等々、そのほとんどがメルアド入りだ。

 

 こうして、オレは半年で10人を喰った。

 

 

 病気の話は明るく流し、「治っても治らなくてもキミが最後の恋人だ」「もうHできないんじゃないかと不安なんだ」と口説きまくり、飽きたら「放射線治療で入院するんだ。やつれた姿は見せたくないから、退院したら連絡するね」とバイバイ。まったくもって酷い話だ。

 

 そのうち、オレにはどえらい天罰が下されるかも…。

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