車でいちゃつくカップル。なんかウザい。皆さんも一度はそう感じたことはないだろうか。
髪の毛をなでたり腕をからめたり、顔を近づけたり。しかも、ああいうハタ迷惑な行為をやってるのに限って、たいていはブサイク同士のちんちくりんと相場は決まっている。
裏モノJAPANでは以前にも同様のテーマでヤツらに渇を入れたことがある。
されど現実は、まだまだなくならない。ここは再び、面と向かって注意してみようではないか。
マスクのゴムぴょーん 「やめてよぉん」
金曜日、夜10時。アルコール臭でもわんとした電車内でさっそく発見した。
2人とも20代後半だろうか。女はマスクをしていてもわかるほどのブサイクさんで、男のほうはくしゃおじさんみたいな風貌だ。なにか小声でボソボソ言いながら手をからめあっている。
ああ、やっぱり見苦しい。2人だけの世界にどっぷりはまっているようで、男がマスクのゴムを彼女にピーンとやり、女が「やめてよぉん」を繰り返す謎の儀式で盛り上がっている。
あのな、見てるこっちのほうが止めてほしいと思ってるわ。もう看過できない。近づいて声をかける。
「あの、ブサイク同士で見苦しいんでやめてもらえます?」
どうだ。ガツンと言われてさすがに申し訳ないと気づいただろう。わかったらさっさと謎の儀式をやめなさい。ところが2人はオレの声など聞こえなかったように、見つめあってるままだ。あれ、声が小さかったかな?
「ねえ、ブサイク同士でいちゃつかないでくださいよ」
「……」
「聞いてます? そんなの見せられるこっちの身にもなってほしいんだけど」
「……」
完全無視の姿勢は崩れない。マスクピーンはやめているがこちらを向く気配はない。その後も見苦しい旨を何度も伝えたが、結局一度も返答のないまま、次の駅で2人は出て行ってしまった。まあいい。自分たちの非を認めたからこそ逃げるように降りていったんだろうし。
「愛してる。愛しすぎてる」「愛しすぎてるくらいでいいんだよ」
くしゃおじさんたちが消えた電車を歩き回っていたらまたもやアツアツのカップルが。ギュッと抱き合ったまま座っている。
近づいてみれば、小さな声で会話がなされているようだ。
「すごい愛してるよ」
「うん」
「●●もオレを愛してる?」
「愛してる。愛しすぎてる」
「ンフフ。愛しすぎてるくらいでいいんだよ」
なんじゃそりゃ。森脇健児似とサカナ顔の女に似合うセリフじゃないんですけど。
「お取りこみ中すいません」
「ん?」
「ここ、アナタたちの部屋じゃないんで、ブサイク同士でいちゃつくの止めてくれませんか?」
言われている意味がわからないのか、森脇は口をぽかんと空けたまま動かない。女も驚いた顔だ。ようやく反応したのは女のほうだ。
「いや、その…」
「お願いしますよ。ブサイク同士で見苦しいんで」
「そうですね。すいません」
2人はきちんと座りなおし、下を向いたまま無言となった。よしっ!
「ブサイク、ブサイクって、しつけーんだよ!殺すぞ」
別の電車に乗りかえて無法者を探索する。早々に見つけたのはベッタリ腕をからませ、顔を近づけて見つめあうカップルだ。横に座るギャルも迷惑そうにしている。
2人の顔を見て驚愕した。揃って西武ライオンズのおかわり君にそっくりなのだ。似たもの同士で惹かれあったのだろう。
「あの、見苦しいんで、ブサイク同士でべたべたするのやめてくれませんか?」
おかわり君(男)が振り向いた。
「え? なに?」
「だからブサイク同士でいちゃつくのはやめてくれません?」
「俺らがブサイクなの?」
「そうです。見苦しいんですけど」
おかわりさん(女)もキッと睨みつけながら加勢する。
「ぜんぜんベタベタなんてしてないんだけど」
「ブサイクって、オマエ何様?」
2人がかりでくるか。同じ顔して。なんだか不思議な感覚だ。
「見苦しいから注意してるだけです。ブサイクじゃなかったらいいですよ、いちゃいちゃしてようが」
「俺らがブサイクって、だったらオマエもそうじゃん」
「僕はいちゃいちゃしてないですからね。ブサイクが電車に乗ってるだけならなにも言いませんよ」
「だからブサイクブサイクって、しつけーんだよ。殺すぞ!」
「いちゃつくのを止めたら僕は黙りますよ」
そこでちょうど駅に停まってドアが開いた。2人は「調子乗ってんじゃねーよ、バーカ」と捨て台詞を残して去っていった。
赤ゴリラの顔はますます赤くなるばかり
優先席に座って顔を寄せあってるのは共に20才前後らしき、サバンナ高橋似とゴリラ顔の女だ。唇の距離、およ10cm。いまにもブチューっといきそうなまま時間が止まっている。
あっ、ゴリラ女が口をすぼめた。続いて高橋も。その距離を保ったまま、エアキッスの応酬だ。もうだめだ、カチンときたぞ。
「ちょっとちょっと、ブサイク同士でそれはダメですって」
高橋が目を真ん丸にしてこちらを見た。ゴリラ女は一瞬で顔を真っ赤にして下を向く。
「アナタたちの容姿で、そんないちゃついてるのを見てられないですよ」
「オレらがなにしようと関係なくない?」
「関係ありありです。ブサイク同士のキスなんて誰がみたいんですか? 逆に見たいですか?」
「ハハハ。なぁ、俺らブサイクだってよ」
高橋が女に振るも、赤ゴリラの顔はますます赤くなるばかり。どうやら女は自分たちの失態に気づいているみたいだ。
「関係ないから、どっか行ってくんない?」
「もう二度といちゃつかないって約束してくれるなら」
「だから関係ないっしょ、オレらのことなんだから」
「ブサイク同士のそんなんを見たくないって言ってるんですよ」
「だったらどっかに行けばいいんじゃないの?」
そのとき、オレの隣に立つサラリーマンが口を開いた。
「オレもこのお兄ちゃんに賛成だよ。キミたち、そういうのは外でやるもんじゃないんだからさ」
予想だにしない援軍に高橋も気勢をそがれたのか、「チッ」と舌打ちをしてケータイをいじりはじめた。リーマンはオレにニコっと笑顔を見せてくれた。
これが美男美女ならステキな光景だが
山手線の終電車に、別れを惜しんでいるような表情で寄り添うカップルがいた。
女が男の腰に手を回し、男がギュっと抱きしめ、ときには髪の毛をつまんで、なんとも愛おしそうだ。これが美男美女ならステキな光景なのだが、そろって顔面偏差値が30なのだからいただけない。
「ちょっとよろしいですか?」
「はい? どうしました?」
男が返事をした。2人の時間を邪魔されたからか、ムッとした表情だ。
「ブサイク同士でそのいちゃつきはいかがなもんでしょうか」
「ブサイク? 誰が?」
「アナタ方ですよ。見苦しいんでやめてもらえます?」
しばしの沈黙。そして男がいきなり胸ぐらをつかんできた。
「あ? もう一回言ってみろよ」
「だからブサイク同士で…」
「誰がブサイクだって?」
「アナタたちですよ。見てらんないんです」
男がオレの肩をグッと押した。自分らの行為を棚にあげてなんだよ。やるならやってやるぞ。
「やめて、●●クン!」
「あのね、ブサイクなカップルのいちゃつきなんて気持ち悪くて見てらんないんですよ」
「わかりました、すいません。ね、●●クン、行こう?」
握ったコブシをそのままに、2人は別の車両に逃げていく。あの調子じゃまたやるんだろうな。
「オレたちってブサイクかな?」「そんなことないよ」
見たところ30代後半だろうか。男女ともにスタイルはいいのだが、やっぱり顔が残念ないちゃつきカップルがいた。例のごとく髪をなでたり腕を絡ませている。そのうち男がマスクをしたまま、女の唇に近づいてマスク越しのキスをした。
うえ〜。キッツいなぁ。
「電車の中ですよ。ブサイク同士でいちゃつくのはやめません?」
「はい?」
「見苦しいんです。家でやったらどうですか?」
マスクをとった男は小島よしおの8割減といった具合のブサイクさだ。目をパチクリさせながら苦笑いをしている。
「すいませんね、ブサイクで」
「いや、ブサイクなのは仕方ないです。だけどいちゃつくのは見過ごせないんですよ」
「なんで?」
「周りの人の気持ちを考えたことあります? ブサイクがいちゃいちゃしてるのなんて誰も見たくないんです」
小島が女のほうを向く。
「オレたちってブサイクかな?」
「そんなことないよ」
「だよね。この人ヘンだね」
なにを言ってるんだ。ヘンなのは美的感覚と身の程を知らないオマエらだろうが。
「とにかく、ブサイクなんだから人前でそういうのはやめてくださいね」
「はいはい、わかりました」
反省の言葉は出たが、本当に悪いとはみじんも思っていないようで、小島が再び女の髪に手をやった。あー、なんでわかってくれないんだよ。
そのとき、カップルの隣に立ついかにもオラオラ系の兄ちゃんが声をあげた。
「オマエらヨソでやれよ。さっきも言われただろ? 気持ちわりーんだよ」
さすがに分が悪いと思ったのか、2人は次の駅で逃げるように降りていった。気持ちいいなぁ。