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右足はどこだ? 出口はどっちだ! レスキュー隊員、今日も現場に出動す(後編)
2015.11.13

20151112-2

 

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温泉旅館で8対8の大乱交!

 来る日も来る日も、訓練と事故現場の処理に明け暮れるレスキュー隊。当然ながら溜まるストレスもハンパじゃない。その発散法はやはり女と酒しかなかろう。例えば、我がチームの場合は、月2回コンパニオン付きの宴会を開催、2次会はキャバクラへ繰り出し、一晩で3〜4万を散財する。

 

 憂さ晴らしには持ってこいだが、このとき幹事を任命されたら最悪である。仮にブスなコンパニオンが来ようものなら、上役から非難ごうごう。若い連中など、管轄外の同期などと常にコンパニオン派遣業者の情報交換を行っているほどだ。おそらく、日本で一番宴会コンパニオンに詳しいのは、消防士だろう。

 

 

 オレがこれまで参加した宴会の中で最も凄まじかったのは、2年前に開かれた、消防学校の同期会をおいて他にない。約50名の参加者がガンクビ並べて出向いた先は、X県南西部にある観光都市の老舗旅館。大広間で酒を浴びるほど飲み、2次会は7〜8名のグループで自由行動という流れになった。

 

 当時すでに女房もいたオレは、まったり飲もうとグループの仕切役に提案。部屋に戻ったまではよかったが、「おかえりなさいませ〜」いかにもピンクなコンパニオンが1、2…8人!

 

「お〜!」

 

 火消し野獣どもが、瞬時に好みの女の下へダッシュする。一歩出遅れたオレのところにも21才の若い女がついた。色白でロリ顔巨乳。まさか…。

 

 が、そのまさかは最初から起きるよう仕組まれていた。30分もしないうちに王様ゲームが始まり、気がつきゃ女は全員半裸。狭い部屋はたちまちヤリヤリムードに包まれた。

 

「フェラなら5千円、本番は1万円だから」

 

 もうヤメられない、止まらない。仕切り役の囁きにウンウン頷き、巨乳にムサぼりつけば、あっと言う間に8対8の大乱交大会とあいなっていた。

 

 あまりの興奮シチュエーションに、対面で絡んでいた同期などは挿入直後に大暴発。部屋中にぎゃはははは〜と大爆笑が沸き上がる。いや〜、いま思い出しても楽しい一夜であった。

 

 余談ながら、いつもこんな調子でプロの女性と遊んでいると、素人女性をまったく口説けなくなってしまう。どころか、風俗やキャバクラにハマり、サラ金に走る消防士は決して珍しくない。

 

 

壁に付いた指の跡は隊員の断末魔の叫び

 

『新町局より火災通報入電中!』

 

 平成12年2月の某日深夜11時20分。訓練を終え、休憩室で『恋のから騒ぎ』を眺めていたら、突然、指令課より予告指令が鳴り響いた。

 

 大慌てで銀色の防火衣をまとい、1分ジャスト(昼間は30秒)で階下のポンプ車へ。地図を見ると、署から現場の住宅街までは約5分の距離である。付近の地水利はどうか。消火栓が路上駐車で防がれてなければよいが…。サイレンをこだまさせ、7台の消防車と救急車が街中を疾走する。オレは無線に耳を傾けながら、空気ボンベの着用にとりかかった。

 

『ただいま北方面に延焼中』

 

 ドクン、ドクンと高鳴る心臓。間もなく前方に入道雲のような煙の姿が浮かび上がり、さらにその先の交差点を右へ曲がると、目の前が眩い炎に包まれた。木造の一軒家が燃焼している。2階の北西部分が特に激しいようだ。ベンケイ(斧のような工具)と懐中電灯を持ち、ホースに手をかけた、そのときだった。

 

「助けて! 私の息子を助けて〜」

 

 裸足で泣きじゃくる1人の女性が髪を振り乱しながらオレの腕にすがってきた。形見や金庫が置きっぱなしと膝まづく者。新築のローンはどうするのかと唖然とする者。火事の現場では多くの悲痛な声を聞いてきたオレだが、子供が取り残されたというケースは初めてだ。1分後、隊長から集結命令が出され、レスキュー隊員一堂が玄関前に集められた。

 

「伊東、2階の人命検索にあたれ」

 

 母親のヤリトリを見ていたのだろうか。隊長から命令が下る。すぐさま管そうを握り、家屋の中へ。床が抜けないか慎重に足場を見ながら、上を目指すと、間もなく、子供部屋のドアに突き当たった。バックドラフト(密室の中でくすぶる火種が、酸素を急激に取り込むことにより起こる爆発現象)の危険を懸念し、慎重にドアノブに手をかける。

 

 ゴワワワワ〜

 

 突然、襲ってきた煙によって視界が遮られる。ヤバイ! 慌てて放水したものの、斜めを横切っていく火柱のイキオイは加速するばかりだ(後で知ったことだが、入室直後に別動隊員が天井を開けたため、空気の流れが加速、一気に炎が燃え盛ったらしい)。

 

 灼熱の火災現場で、ガムシャラに2〜3分ほど放水し続けただろうか。空気ボンベの残りが5分を切ったとき、ようやく目の前の濃煙が晴れ、部屋の中が見渡せるようになった。脆くなった床に足をとられないよう、スパイダーマンのような姿勢で両手両足で探っていく。ん? 何かが足に当たった。咄嗟に下を見る。ベッドとタンスの隙間に挟まれた人の銅像…。

 

 そこには、体育座りの格好で焼け焦げた男のコの姿があった。

 

 うぉぉぉ〜!

 

 絶叫するよりなかった。なぜ、上の窓ガラスに手を伸ばさなかったんだ!? なぜキミは死んでしまったんだ!外に出ると、憔悴しきった母親が道路でうずくまっていた。とても声をかける気にはなれなかった。

 

        
 それから2年後のある日。オレは燃え盛る6階建ての雑居ビルの4階を検索していた。すり足で中へ進み、要救助者がいないことを確認、隊長の元へ戻ろうとしたとき、突然、室内が濃煙に囲まれた。すぐに視界はゼロ。激しい煙は上下以外の方向感覚を完全に麻痺させ、まるで夢の中にいる錯覚さえ覚える。

 

 落ち着け、落ち着け。出口は確か…。おいおい冗談はやめようぜ。シャレになってねーじゃねーか。手探りで室内を回ってみるも、トビラは一向に見つからない。空気ボンベの残量は6分。クソ熱い部屋の中で体中に湧き出る冷や汗。マズイ。完全に見失った。マジで死ぬかもしれない。女房、子供の顔が頭に浮かんできて…ウソだろ。

 

 半ばあきらめかけたとき、幸運が訪れた。煙と煙がぶつかって中性帯(隙間)ができ、そこからたまたま出口を見つけられたのだ。まさに九死に一生を得たオレの背筋が本当に寒くなったのは、後に他のビルの実況検分に出向いたときだ。真っ黒焦げの壁の至るところに付いた、出口を求めて彷徨う指の跡。オレと同じくビルの煙に巻き込まれ、グルグル部屋を回った挙句、殉死したレスキュー隊の断末魔の叫びだった。偶然、中性帯ができたオレと殉死したレスキュー隊との差は何なのか。未だに答は出ていない。(構成・編集部)

 

 

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