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歌舞伎町のホストクラブで1300万を飲み逃げした女。その顛末とは?
2015.11.6

乾杯シャンパン

『売り掛け』。
俗に『ツケ』と呼ばれる支払い方法は、商売を営む側にとって、まんざらマイナス面ばかりではない。どころか、とりあえずの手持ちがない客をもキャッチできるという意味では、むしろプラスに作用すると言ってもいいだろう。

 

 

実は、ホストという職業ほど、この『売り掛け』を駆使する人種はいない。新規客をハメるために。なついた女から大金を引っ張る道具として等々。ツケは大きな武器として力を発揮する。

 

 

しかし、一方でリスクも小さくない。売り掛けをした客が万が一、逃げた場合は、担当ホストがそのケツを拭くのが業界のルール。つまり全額負担だ。

 

 

当然、ホストはそんな事態にならぬよう、取り立てに必死なのだが、それでも未回収金は出る。例えば、新宿・歌舞伎町のホストクラブの場合だと、どこの店でも、月に30人以上の客に逃げられ、平均300万円ほどが回収不能になっているという。

 

 

ここで紹介するのは、歌舞伎町で起こった前代未聞の飲み逃げ事件。約50本の高級ボトルを開け1,300万を使わせたところで、女に飛ばれた、若手ホスト、ヨウシ(仮名、23才)の体験談である。

 

 

なぜ、そこまでの大金を客に使わせたのか。この不測の事態に、彼はどう対処したのか。事の発端から終演までの一部始終を本人に語ってもらおう。(編集部)

 

 

銀行に二千万の貯金があるらしい

エミと出会ったのは、去年の1月だよ。夜11時頃、セントラル(通り)でキャッチしてたら、ヒマそうに歩いてる女がいてさあ。雰囲気は、いかにもなギャル。目の回りを真っ黒に縁取って、髪は内巻きのセミロング。やたらキャピってて、自分のこと「ぇみチンわぁ18」とか舌っ足らずな喋り方すんだよな。正直、バカじゃねーてのが第一印象。

 

 

でも、ちょっと話してたら、いろんなホストクラブで遊んでる浪費家っぽくて、金の臭いがプンプンすんのよ。つーか、写メをひけらかして、言うんだよ。

 

 

「この前、ピンドンでシャンパンタワーもやったしぃ」

 

 

ゲッ、何この女!とか見る目が変わったね。シャンパンタワーってのは、グラスでピラミッドを作って、上から酒をブチまける、余興みたいなもんね。使うシャンパンにもよるけど、最低でも50万。本当にピンドン(ドンペリのピンク)だと300万は超すよ。

 

 

もう何がなんでも自分の客にしたいと思っちゃったんだよね。でも、結局その日は、店に連れて行けなくてさ。マックおごって、携帯の交換して終了。次の日からメールと電話で営業かけまくったんだけど、そうしてると、少しずつ何してるヤツかがわかってきた。たぶん、デリヘル嬢。いや、まず間違いないと思ったね。例えば、夜中の1時にメールすんじゃん。レスは《町田に移動中(汗)》とか。その後4時に《川崎に向かってる》とか。フツー、ありえなくね?

 

 

あと、エミの雰囲気が、俺の客のデリヘル嬢に似てたんだよね。シャンパンタワーが好きなとこなんかも。その客のデリヘル嬢がハンパなく稼いでんだよね。前に通帳を見せてもらったら、預金が3千万だぜ。だから、エミもそうかもって勝手に盛り上がってさあ。それとなく探りを入れたら案の定だったよ。ウソかホントか、2千万持ってるって。ちょービビった。

 

 

気合い入ったねー。一応その後、個人的に会って、飲みに行ったりセックスもしたんだけど、来店話は毎回のびのび。しつこく営業メール送りすぎたせいか、だんだん返信も悪くなってさ。そのうちオレも連絡を取らなくなったんだよね

 

 

このお店の酒、全部もってこ~い!

9ヵ月くらい間が空いて、次に会ったのは、去年の11月17日の夜の1時頃。キャッチ中に偶然見かけて、「あっ」みたいな。エミの方も嬉しかったぽくて、アイツの方から切り出してきたよ。

 

 

「じゃあ、ちょっとだけ、店行ってあげてもいいかもぉ」

 

 

知ってると思うけど、ホストクラブってのは、基本、水商売やってる女のための店だから、開店は普通、真夜中。オレのとこは2時オープンなのね。なんで、居酒屋で時間潰しして、3時前に店に入った。ひとまずハウスボトルで乾杯して、頃合いを見てシャンパンを勧めたよ。2千万持ってんだから、そこは、やっぱガンガン使ってもらわないとさ。

 

 

でも、エミは言うんだよね。銀行にはたくさんあるんだけど、今日はあいにく持ち合わせが少ない。だから、酒を入れるのは次回にしとくって。一切聞き入れなかったね。そんな断りいちいち聞いてたら、ホストやってけないじゃん。当然、押しまくったよ。

 

 

再会を祝いたいだの、他の席の客に金のあるとこ見せてやってだの。で、足りない分は売り掛けにして、店を出た後、一緒に下ろしに行こうって。なんとか納得させて、6万円のドンペリの白入れさせたよ。もちろんシャンパンコール付きね。シャンパンコールってのは、高い酒を入れてくれた客に対して、店のホストたちが全員で声を上げてお礼すんのね。つっても本当のとこは、金持ちの自尊心をくすぐって、もっと酒を入れてもらおうって魂胆のデモンストレーションなんだけど。

 

 

「えみちゃん、ありがと! ありがと、えみちゃん—」

 

 

してやったりで、エミにスイッチが入ったよ。2本目から、すげー勢いで酒を入れ出したんだ。ホストクラブの酒って、基本的に客が飲むもんじゃなくて、女は二口三口程度で、担当ホストやコールの連中にガンガン飲ませるもんだからさあ。エミのボックス席は、もうドンチャン騒ぎだよ。ツブれるヤツ。裸になって踊り出すヤツ。オレも途中から記憶が無くなったんだけど、朝6時ごろロマネコンティの330万が入ったことはしっかり覚えてる。さすがにエミも酔っぱらったらしくて、スゲーこと言ってたよ。

 

 

「この店の酒、全部持って来~い!」

 

 

「おまえ、売り掛け1千300万持たされて、飛ばれたんだぞ!」

身元もよくわからぬ18才の小娘に、なぜここまでノンストップで飲ませたのか。仮に、ヨウシがエミの支払い能力を完全に信じ込んでいたとしても、店側までもが、どうして易々と女の注文を許していったのか。ヨウシは言う。

 

 

「ホストクラブで遊ぶ客の中には、まれに彼女のような浪費娘はいたから、特に不自然に感じなかったんだよね」

 

 

いずれにせよ、エミが好き放題をやり尽くしていた午前7時、ヨウシは記憶を失い、気付けば夜の8時だった。

 

 

携帯の呼び出し音で目を覚ましたら、どうやって帰ったのかはわからなかったけど、家のベットの上でさあ。電話取ったら、オーナーだったよ。

 

「やっと出たよ。おいヨウシ、あの女、何もんだよ?」

 

 

寝起きで、まだボーっとしてるとこに言われても、何のことかわかんねーじゃん。そしたらオーナーが怒鳴るんだよ。

 

 

「まだ知らねーの? あのエミって女、逃げたんだよ。おまえ、売り掛け1千300万持たされて、飛ばれたんだぞ!」

 

 

一瞬で目が覚めたね。そんなバカな、だよ。逃げたとか飛ばれたとか、何だよそれって動揺しまくったよ。オーナーの話だと、エミのオンステージは朝の9時過ぎまで続いて、ホストたちは全員ブッ倒れてたらしい。で、支払いは1千300万オーバー。けど、ヤツは全然ビビらずに、オレと銀行行くってきかない。でも、オレもぶっ倒れてるもんだから、それじゃあ会計係のキャッシャー2人が同行することになった。

 

ところが、店を出る寸前にヤツが言い出したんだと。

 

 

「あー、最悪ぅ。キャッシュカード忘れたっぽいしぃ。ヤバいですよね? 家まで取りに行っていいですかあ?」

 

 

明らかに怪しいけど、言うこときくしかないよね。で、店のスタッフがエミをタクシーに乗せて、彼女の自宅まで連れてったんだ。着いたのは立川の大きなお屋敷。

 

 

カードを取りに行かせる前に、ヤツの携番確認して、あと身元のわかるものも押さえたかったけど、免許証や保険証は持ってなかったらしくて、とりあえず、美容院や服屋のポイントカードを残させた。ホストも客なんだよ。

 

 

売り掛けのリスクをも押してでも、必死に働いて利益を上げてくれるホストは、ある意味、女以上の客なのかもしんない。だから、オレという保証を持っている店が、本気でエミを探そうとするとは思えなかった。どうにかして、自分でエミを見つけなきゃいけないと、って。

 

 

 体を売らせるしかなく、沈め屋に相談

エミに飛ばれてから2〜3日は、いろんな人から電話やメールが来たよ。歌舞伎町中にオレの噂が流れたらしくて、「本当の話なの?」とか「頑張れよ」とか。オレは、自分の知る限りのデータを伝えて、情報を募った。その時点でわかってたのは、電話番号&メアドと、カードに関係する店の類。あと立川の地理に詳しいんで、住んでる可能性が高いこと。

 

 

そして、最後が重要なんだけど、実は名前は『山下エミ』じゃなくて『イホ・リカ』というらしいんだ。この『イホ』という名字は、例の『山下』カードの中に1枚ビデオ屋のカードが混じってて、そこに英語で書かれてんだよね。キャッシャーはうっかり見落としていたみたい。

 

 

『イホ』ってスゲー変わった名字じゃん。

 

 

普通、思い浮かばないよね。つまり、本名。そう考えるのが自然だろ。とにかく、こうしたネタを使ってエミを探し出さなきゃなんない。足がかりとしては、まず携帯番号から住所を割り出すとか。けど、考えたそばから頭を抱えてた。逃げた、ということは金がないわけじゃん。
だったら、もし見付け出したとして、どうやって1千300万を取り戻せばいいのかって。

 

 

答は一つ。

 

 

体を売らせるしかないよな。思うが早いか、先輩ホストのダイキに相談したよ。

 

 

以前、先輩が売り掛けで追いかけた客を風俗に沈めたという話を聞いたことがあったからさダイキは最初、売り掛け奪還業者ってのを教えてくれた。何でも、ホストクラブや銀座や赤坂のクラブの、ツケに関するトラブルの面倒を見る業者らしいんだ。費用は、引っ張る金額に比例して、1千300万だと、300〜500万くらいだと。さすがに、二つ返事とはいかなかった。黙ってる俺を見て、ダイキが言ったよ。

 

 

そしたら、自分に探させてほしいって。女を沈めてくれる知り合いがいるから、見つけた後も面倒みようって。成功報酬で80万。断る理由はなかったね。

 

 

ダイキが取っ掛かりにしたのは、やはり、珍しい『イホ』という名字だった。

 

 

彼はまず、立川の市役所に出向き、住民基本台帳を閲覧する。名前、生年月日、性別と住所が載っているデータベース。それなりの目的があれば、誰でも閲覧可能だ。そして、それなりの目的を、ダイキは大学のレポート作成のためとした。研究テーマは民族史。係員は疑いもせず、台帳を出して寄越した。

 

 

果たして、立川市内に『イホ・リカ』は1人だけ存在した。本人に間違いない。

 

 

彼女は17才。未成年だった。

 

 

歳を聞いたときは、さすがにヤバイと思った。でも、こっちも後には引けない。次の日、その住所の実家に、ダイキともう一人後輩連れて一緒に向かったよ。ただ、家に押し掛けるつもりはなかったね。事を荒立てて、親に泣きつかれてもゴタゴタするだけ。だから身柄をさらって、風俗に売ってろうと思って。12月13日のことだよ。

 

 

ヤツの自宅は、例のお屋敷から500メートルも離れていなかった。もう間違いないよな。

 

 

計画では、まず先輩が家を訊ねて、家に本人がいるかどうか確かめる。とり急ぎ、中身デタラメの中学のクラスの同窓会名簿を作ったんで、親が出てきたときはそれを見せて、もしリカが出てきたら、「学年違いでした」って、顔の確認だけして戻るつもりだったんだ。結果は、家に誰もいなかった。だったら待つしかないよな。

 

コンビニで発見! 気づいたら髪を引っ掴んでた

でも、8時過ぎに母親らしき人間が帰宅したただけで、本人は姿を見せない。そもそも、家にきちんと帰るようなタイプじゃないからな。
それに、あまり一ヵ所に車を停めてると、近所の住民に怪しまれるし、今日はもうこの辺で引き上げるかって。で、帰りにコンビニに寄っら、そこにいたんだ、ヤツが。超びっくりしたよ。リカも、すぐにオレに気づいたみたいだけど、逃げたりはしなかった。ただ、黙って立ってた。

 

 

俺はもう興奮しちゃって、髪をひっつかんでたね。さっそくダイキが沈め屋に連絡して、業者が到着するのを喫茶店で待つ間、問い詰めたよ。どういうつもりだったんだって。したら、払うつもりだった、逃げるつもりはなかったの一点張り。まったく、どうして、こんなに肝が据わってるのか不思議というか、ムカついて仕方ないんだよね。で、ビビらせたくて、ダイキから教えてもらった誓約書を書かせたんだよ。

 

 

『この度は、私が起こした不祥事により—一切不服は申し上げません』みたいな文面で、法的効力はまったくないんだけど、やっぱリカも動揺したみたいでさ。少しすつ話をし始めたよ。

 

 

思ったとおり、仕事はデリヘルだった。ホスト遊びは、同僚から教わった1年半前から始めたらしい。2千万の貯金はやはりウソだった。売り掛けの踏み倒しは常習犯で、過去に2度捕まったこともあるらしい。が、運良く売り飛ばされずに済んだという。

 

 

山下エミの偽名を使いだしたのは、そんなトラブルがキッカケで、別に騙す目的じゃなかったって本人は言ってる。ただ、俺と店に来たその日、1本目のドンペリを入れようとしたとき、近所に「山下」ってお屋敷があるのを思い出して、とっさに騙そうって閃いた、と。ったく俺もナメられたってもんだよ。つーか、あの女、考えが甘すぎだよ。

 

 

けど、本当に甘かったのは、俺だよ。リカの話が終わるころ、フーゾクの業者が来てさ、年齢を聞くなり言うんだよ。

 

 

「あちゃー。17才かあ。子供は、ウチじゃ売れないねえ」

 

 

現在、ヨウシは、350万円の借金を抱え、未だ同じ店で働いている。プレッシャーをかけ過ぎて彼が飛んでしまうことを恐れたオーナーが、売掛を減額してくれたらしい。ちなみに、その後リカとは、一切連絡を取っていない。

 

 

 

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