アンダーグラウンド
CMでよく見かけますが…。過払い金返還ブームの影に潜む 悪徳弁護士事務所の悪行
2015.10.15

あなたの借金問題を解決します! 『○○法律事務所』
ここ数年、電車内やTV、ネットなどでよく見かけるこの手の広告。
ご存じ、サラ金との間で長期間にわたり借金と返済をくり返した場合に生じる「過払い金」の返済請求をうたったものだ。

 

過払い金については、くどくど説明する必要はなかろう。
これまで野放しになっていたグレーゾーン金利【利息制限法(年15%〜20%)と出資法(29・2%)の間に設定された金利】を最高裁が06年に禁止したためにできた、余剰支払い分のことである。
要は、払いすぎた金を取り戻せるようになったのである。

 

だがあの広告群を安易に信じてはいけない。
いま巷には、過払い金返還をエサに、多重債務者を食い物にする悪徳法律事務所が横行しているのだ。
かくいう私が事務員として働く弁護士法人Xもまたそのうちのひとつ。
いや、悪質さでいえば間違いなくトップレベルだろう。

 

 

そもそも法律事務所にとって、過払い金の返還請求ほどボロい商売はない。
依頼者から受け取る弁護士費用がサラ金1社あたりで3万。
さらに成功報酬が、回収した過払い金の20%。
そして、減額後の元金(=残債務)の10%が減額成功報酬として転がり込む(額やパーセンテージは事務所によって多少の差アリ)。
かりにサラ金6社で過払い金が200万発生し、残債務が300万だとすると、ざっと90万の儲けが出るのだ。

 

 

こんなウマイ業務なのに、サラ金側との交渉は簡単極まりない。
サラ金があっさり過払い金の返還に応じるイメージはあまりないかもしれないが、現実は弁護士の言いなりで、交渉が決裂して訴訟になるケースは珍しいくらいだ。

 

以上、過払い金の返還請求がいかに割のイイ仕事か理解したところで、本題に入ろう。
過払い金返還を専門とする悪徳法律事務所が、獲物に近づく手段は大きく2つある。
DMと電話営業だ。

 『突然の電話失礼します。○○さんは過払い金というものをご存じでしょうか? 簡単にいうと今まで払いすぎていた金利を取り返せるものでして…』
その際、欠かせないのがサラ金大手・中堅クラスの顧客リストだ。
本来は入手困難な代物だが、現役のサラ金社員の協力があれば造作はない。事務所側が金で買収したり、逆にサラ金社員が小遣い目的で話を持ちかけてきたり。
両者の癒着は皆さんが想像する以上だ。

 

3年前、大手サラ金に勤めながら転職活動をしていた私も、Xでの面接でこんなことを言われている。
「キミ、いまの支店では主任なの? てことは顧客情報を管理する立場だよね?」
「ええ、まあ…」
「じゃあその情報、ウチにちょうだいよ。そしたらソク雇ってあげるから」
提示された年収は500万。
しかも、土日祝日休みの完全週休2日制。
サラ金の地獄の労働環境に慣れた私には夢のような条件である。
X側の要求に迷わず応えたのは言うまでもない。

 

悪徳事務所のやり口は、金儲け主義に徹した実にわかりやすいものだ。
まず依頼者とは直接会うこともなく、電話・FAX・メールのみでやり取りを行い、過払い金が発生しそうな案件を優先的に処理していく。
逆に大した金額にならないとわかれば依頼拒否が基本だ。
が、イケイケの弁護士法人Xは、さらにその上をいく。
今年5月、50代の会社員がXを訪れた。
仮にその男性をKさんと呼ぼう。
Kさんが消費者金融6社からつまみにつまんだ額は計320万。
毎月の支払いは11万に達しており、どうにか整理してほしいという。そして借金の件は、妻には絶対にバレたくないとも。
相談を受けた私は、各サラ金との取引き履歴からかなりの額の過払い金が発生することを確かめたうえで、Kさんに言った。
「自己破産しか方法はないですね。それで借金をチャラにしたらどうでしょうか?」
「妻にバレないんですか?」
「ええ。会社にだってバレませんよ」
これは本当の話だ。自己破産といってもあくまで書類上の手続きであり、弁護士が代行すればまず第三者に知られる心配はない。
こうして依頼者を説得した後、X側は勝手にサラ金6社に過払い返還を請求した。
10年以上も莫大な利息を払い続けてきたKさんの場合、返還金によって元金がすべてゼロになる上、さらに260万円が余る。
Xはその260万を横取りし、Kさんには、後日、自己破産が上手くいったとウソの報告をし、弁護士費用として20万を受け取った。
実際は自己破産の手続きなどやってないのに、だ。
耳を疑うかもしれないが、Xではこのような犯罪行為が日常的に行われている。
そしてそれは、過払いブームが廃れない限り延々と続くだろう。
     

今回、紹介した事例は全国に吐いて捨てるほどある。
決してXのケースは特別ではないのだ。
甘い話には、くれぐれも注意してほしい。

 

※当ページは月刊裏モノJAPAN2010年1月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

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