スポット
51才、中年オヤジ。人は彼をピンサロDJと呼ぶ(前編)
2015.10.13

120425【裏モノJAPANオンライン・担当者より】

当ページは、月刊『裏モノJAPAN』2015年6月号に掲載された記事を再編集したものです。

大阪のピンサロに、マイクパフォーマンスが激しく魅力的なボーイがいると聞きつけ、現地まで走った編集部員・タテベ。その目に映った現場と、ピンサロボーイの生き様を、紙上に再現した次第です。

 

ピンサロファンも、そうでない方も。

日本の風俗伝統芸・マイクパフォーマンスに長けた男の一生にしばしお付き合いくだされ。

まずは「前編」からスタート、イージードゥダンス!

 

【本文】

3月末の某日、オレ(編集部・タテベ)は大阪のとあるピンサロにいた。
この店にマイクパフォーマンスが滅法おもしろいボーイがいると聞きつけたためだ。
ピンサロのマイクといえば「3番テーブルユミちゃんお願いします」ぐらいのもんだが、明らかにそれとは一線を画すらしい。

 

店内に入った瞬間、大音量で映画「ロッキー」のテーマ曲が聞こえてきた。
続けてマイクを通した声が。

「しゃぶれしゃぶれ、イキそになったら出してまえ!」
なんだ、この合いの手ラップは。
席に通され、女の子がつく。
フェラが始まってもロッキーの曲は止まず、合いの手も絶好調だ。

 

(タターター)ええやん、イッテええやん
(タターター)搾り出したらええやん
(タターター)ワシもイッちゃいそうやん
(タターター)ホンマ堪忍してや
(タタタータタター)ウッ!
(タタタータタータター、タッター)
 何回イッたら気が済むねん
 ヘイ! ヘイ! ヘイ!

 

しゃぶられながら思わず噴きだしてしまった。
他の席からもクスクス笑い声が聞こえてくる。
とても普通のピンサロの光景ではない。
これじゃヌケないって!

 

本ルポの主人公は、この謎のマイクパフォーマー、トシさん(51才)である。
彼はいかにして〝ピンサロDJ〞になったのか?

 

社会との折り合いのつかないまま40才に

地元大阪の高校を出て以来、周囲とどうにも折り合いのつかない年月がつづいた。
最初に勤めた工場は朝寝坊のせいでクビになり、アルバイトを転々とした後、25才のときにアテもなく東京に出てきたものの、やはり社会にとけ込めなかった。
引っ越し屋では、毎晩のように深酒をして出勤するものだから酒クサイと罵られ、「なんでオマエにそんなん言われなアカンねん!」と突っかかってバックれた。
新聞配達では、配達が遅いだのなんだの言う客と揉めてクビになった。
コピー機の搬入では、上司にブチ切れた。

「じゃかあしいわ、こんガキ! もうええ、辞めたる!!」
こんな調子だから同じ職場で3年と続いたためしがない。気づけば40才になっていた。

 

その次の仕事は、無料求人誌の水商売欄で見つけた。
『サロンのボーイ業務全般』給料30万スタートに惹かれて電話をかけたところ、サロンとはピンクサロン
のことだった。
その日のうちに五反田の店へ面接に行き、その場で採用となった。

 

先輩ボーイが付け回し。後輩がキャッチ

店に所属する4人のボーイは夕方4時までに出勤し、店内の掃除から仕事を始める。
トイレや床の雑巾がけ、ソファもピカピカになるまで拭きあげてやっと掃除終了。
その後は、まだ出勤してこない女の子に電話を入れたり、「お茶買ってきて」みたいな雑用を頼まれたりしながら5時の開店を迎える。

 

開店後は、〝付け回し〞と〝キャッチ〞に分かれる。付け回しは、女の子をどの席に配置するか効率的に回していく業務で、キャッチは路上での客引きだ。
初日のオレはすぐキャッチに駆り出された。

「5千円ぽっきりですよー、お兄さん入ってってえな!」
客が入ろうが入るまいが給料にはね返るわけじゃないので適当にやってたら、一緒に立つ先輩ボーイから耳打ちされた。

「給料30万円って聞いて入ってきたんでしょ?」

「え、はい」

「あんなのウソウソ。ウチは日給8千円だから。オレもう半年やってるけどあいかわらずだよ」
なんやと! それやったら月に25日出勤しても20万にしかならんってことか…。

 

でも辞めようとは思わなかった。
日当の一部の日払いが認められてると聞いたからだ。
金のない身としては、現金その日払いは魅力的だ。
ようやく2人組のリーマンを捕まえ、店へ。
「2番テーブル、アミカさん、アミカさんお願いしまぁす!」
付け回しのボーイがマイクで叫んでいる。
ええなあ、こっちのほうが簡単そうやし。
でも慣習として、先輩ボーイが付け回しで、後輩がキャッチと決まっているようなので、しばらくはこのまま路上で声出しとくしかないな。

「面白かったよ。また来るね」

なんやかんやで入店から1カ月が経った。
日払いのおかげで多少生活は安定したが、給料日にはそれが差っぴかれた10万ばかししかもらえない。
ある日、店長から呼ばれた。
「明日から、ちょこちょこ付け回しもやってもらうから」
おっ、やっときたか!

ピンサロは女の子だけでなくボーイの出入りも激しく、この1カ月で先輩が2人辞めたことで、ようやくオレにもお役が回ってきたわけだ。

 

翌日、いざマイクを手に店内を歩き回った。
たいして客が多いわけでもない店なので、付け回しなんて簡単なものだった。
客が来たら女の子を席につけて、終了時間に離すだけのことだ。
「あゆみちゃん2番テーブル。リホちゃん時間いっぱい!」
こんなもんアホでもできるわ。
キャッチのほうが百倍しんどいって。

 

数週間後、いつもどおり店内を歩きながら付け回しをするオレ。
そろそろあそこの席、時間やな。
「ルミさん時間いっぱい、時間いっぱいです」
ところがルミさん、席を離れる様子がない。
どうやら客がまだイケてないみたいだ。
あかんよ、お客さん。
「ルミさんテーブルのお客さん、急いでイッて、イッちゃってくださーい」
別の席から笑いが起こった。
やば、ヘンなこと言うてもうたか。
店長が近づいてきた。
「ククク、今のさあ、自分で考えたの?」

「まあ、考えたっちゅーか…」

「笑えたよー。あんなの言われたらお客さん集中できないでしょ。アハハハ」

笑ってる。セーフってことでええのやな。

 

気を良くしたオレは、翌日もちょっとだけ自分の言葉を入れてみた。
「2番テーブルさんお時間終了間際です!はよイッて、イッて〜」
有線で流れるダンス系の音楽に合せて「イッて」を繰り返す。
これも店内にクスクス笑いが起こった。
店長に聞いてみた。
「今日のあれ大丈夫でしたか?」

「ぜんぜんいいよ。面白かったし」

意外だったのは女の子たちも笑ってくれたことだ。
「トシさんいいねー。いつも無口で怖い客も笑ってたから助かったー」

「ホンマ?」

「私の客もさ、『面白いなぁ。また来ようかな』って言ってたよ。あんまり集中できなかったけどね。アハハ」

素直に嬉しい。

 

よーし今度は…。
「1番テーブルにアミさん登場! この子でイケなきゃ誰でイク! 4番テーブル、そろそろイカんと終わってまうで!3番テーブルもうイッた? イッたらさっさと帰ってや! いや失礼、お帰りくださいなぁ!」
ちょっとやりすぎ気味に、リズムに乗って思いついたことを言うのがけっこう楽しい。
続けてるうちに、お客からも帰り際、声をかけられることが増えてきた。
「面白かったよ。また来るね」

「おおきに!」

なんかオレ、この仕事向いてるみたいやん。

 

(後編へ続く・10/14公開予定)

 

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